
リノベーションでキッチンを交換したい!そんなとき、何から考えますか?配置、デザイン、使い勝手・・選択肢を考え始めるとたくさんあって悩んでしまいます。今回は、デザインと使い勝手に大きく関わるワークトップ(キッチン天板)の素材に着目したコラムです。リノベーションのイメージの参考にご活用ください。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
目次
王道のステンレスのキッチン天板
アートアンドクラフトのリノベーションで、一番採用が多いのはステンレスの天板。「Stain(サビ) less(少ない)」の名の通りさびにくいのが特長。さらに、汚れが染み込みにくく清潔、傷に強い、熱や衝撃に強いなど、多くの使用上のメリットがあります。
業務用のキッチンもステンレスでできている事が多いことからわかるように非常に使い勝手がいいのがステンレス天板のキッチンです。比較的安価なのも採用が多い理由のひとつになっています。
一方でデメリットは指紋の跡や細かい傷が付きやすいこと。ステンレス天板には様々な加工がありますが、代表的なものは鏡のようにツルツルの鏡面仕上げ、一方向に研磨の模様がつけられているヘアライン仕上げ、ランダムに円を描きながら研磨されているバイブレーション仕上げがあります。指紋や傷が気になる人は少し価格は高くなりますが、バイブレーション仕上げがオススメです。
また、錆びにくいステンレスでもさびる場合はあります。鉄などの金属からのもらい錆の他、塩素系漂白剤や洗剤などの影響でさびることが有るので私用には注意が必要です。
ステンレス仕上げが得意なキッチンメーカーはクリナップやナスラック、サンワカンパニーなど。そのほか、造作でキッチンを作る時も、ステンレス天板をオリジナルで発注して使用することが多くあります。
ステンレス天板のキッチンを採用したリノベーション事例
・住宅設備メーカーに努める施主の細部までのこだわりが詰まったキッチン。天板はステンレスのバイブレーション仕上げ。キッチンの扉は家具のように框仕上げとした。作業用のカウンターも同様のステンレス天板を採用。
・セレクト型リノベーションTOLAでリノベーションした、オトナのひとり住まいの事例。ステンレス天板と、黒のオイル塗装で仕上げた合板を使った造作キッチンがスタイリッシュな印象です。
人造大理石と人工大理石のキッチン天板
建売戸建てや新築マンションなどでよく見るのは”人大”のキッチン天板。同じ用に人大と略されますが、実は人造大理石と人工大理石は異なるというのを知っていましたか?
人造大理石は、天然の大理石を粉砕してモルタルや樹脂等で固めた素材のこと。固めた後に研磨をして仕上げされています。キッチンの大手メーカーでは、トクラス、LIXIL、Panasonic、タカラスタンダードなどでよく採用されている素材です。一方、人工大理石はアクリル樹脂やポリエステル樹脂を主成分とした人工素材のこと。人造大理石と比較すると、自由に成形でき、色にもバリエーションがあります。クリナップ、TOTO、エイダイ、ウッドワンなどは人工大理石の天板を多く使っています。(メーカーによって多少言葉の解釈が異なる場合があります)
バリエーションも豊富な人造大理石と人工大理石。既製品のキッチンで多く使用されています。バリエーションが有り、比較的安価な素材ですが、熱にそれほど強くないのが特徴。鍋の直置きなどはしないように気をつける必要があります。
人工大理石をキッチン天板に使ったリノベーション事例
・リノリウムやローラー漆喰など、天然素材を採用しながら仕上げた事例。キッチンのキャビネット部分には既製品を採用しつつ、天板は人工大理石を採用。シンクと天板がシームレスに繋がる縁なし加工のオーダー品です。
・アメリカ統治時代の沖縄で建てれた外人住宅のリノベーション事例。人工大理石の天板とタイルを組み合わせて、造作したキッチン。
・人造大理石の天板が使われたシステムキッチンを採用した事例。都心のコンパクトなマンションから、緑の見えるアトリエのある住まいを目指して住み替えた、ドール服作家の住まいです。
モルタルのキッチン天板
土間でよく使用するモルタルですが、洗面やキッチンの天板として使うこともよくあります。モルタルを使うと、素材感があって存在感のあるキッチンになります。強度もある素材ですが、注意点もいくつか。モルタルはその性質上、時間が立つと必ずひび割れが出来てきます。ひび割れも含めて空間の味になりますが、ひび割れが気になるという人は採用はおすすめできません。また、水が原因の白華現象や油染みができやすいのでクリア塗装は必須。染みが気になる人は、水や油がずっと残ったままにならないように注意が必要です。
モルタルのキッチン天板を採用したリノベーション事例
・大阪市内のコーポラティブハウス、『都住創』を購入したHさんの事例。目指したのは「美しくあること突き詰めた、光の表情が見えるモノトーンの空間」。壁や階段と同様にキッチンもモルタルで仕上げています。
モールテックスのキッチン天板
モルタルと似た素材として、モールテックスがあります。モールテックスは薄塗りができる左官材のこと。モルタルのようなグレーのイメージが強いかもしれませんが、実はいろんな色が選べます。薄く施工でき、割れが出にくく、水にも強い、水廻りに適した素材です。デメリットとしては、費用が高いこと。商品代も高いですが、施工にも時間がかかるため、施工のコストもかさみます。
モールテックスのキッチン天板を採用したリノベーション事例
・大阪市内で広いマンションを購入してリノベーションした、Sさんの住まい。キッチンは1センチを妥協せず、どこに何を置く?を考え抜い抜きました。オーク材の造作カップボードと、モールテックス天板を選択しています。
木のキッチン天板
木のキッチン天板も人気があります。温かみがあり、ダイニングテーブルと一体型にすることもできます。木材は水には弱いので、クリア塗装や、最近ではガラスコーティングをすることもあります。
木のキッチン天板を採用したリノベーション事例
・オトナの二人住まいの事例。約4.7mのブラックチェリーの無垢材のキッチンカウンター!料理や食事だけではなく、思い思いに寛ぐ時にも自然に夫婦が集まる場になっています。天板はクリア塗装をしています。
・ポップな色使いの60年代テイストの家具や雑貨で溢れたS さんの住まい。L字型のキッチンは、コンロ側はステンレス天板、シンク側はダイニングテーブルと兼ねて使用するため、木材(バーチ)を採用しています。木材部分は特殊なガラスコーティング塗料を施しています。
タイルのキッチン天板
水廻りの壁や、床に使うイメージが強いタイルですが、水に強い素材なのでキッチンの天板にも使用できます。デザインも豊富で、他の人と一味違うキッチンをつくりたい人は検討してみては。目地部分に汚れが溜まりやすいので、メンテナンスをする覚悟は必要です。
タイルのキッチン天板を採用したリノベーション事例
「ゆるやかな距離を保つ」暮らし方の提案として企画した、リノベーション再販物件。グレーのタイルに白い目地が爽やかです。キッチンと洗面台が並んでいる、ユニークな配置にも注目です。
メラミンのキッチン天板
システムキッチンの面材でよく使われているメラミン化粧材。実は天板でも使える素材なんです。熱や水にも強くて強度に有り、安価でメリットが多い素材です。シンプルな白から、木目調、カラフルなものなど、デザインのバリエーションが豊富ナノもメリットです。ただし、素材感のある素材が好き、という人だと好みに合わない可能性もあります。
メラミンのキッチン天板を採用したリノベーション事例
・賃貸用の戸建てのリノベーション事例。メンテナンス性の良いメラミンの天板を採用しました。
その他の素材
その他、セラミックや天然石などキッチンの天板にも様々な素材があります。使い勝手やデザイン、他の部分のとの兼ね合いを考えながら検討していくのが良いでしょう。
キッチンのリノベーションについて関連コラムはこちら
============
アートアンドクラフトでは、リノベーション経験の豊富な建築士がフルオーダーで設計をしています。まずはお気軽にお問い合わせください。
また、大阪R不動産ではリノベーション向けの物件を紹介しています。ぜひご覧ください!
ー==============ー
文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長