WORKS

心を掴むストック 都住創を継ぐ

大阪市中央区界隈に点在する『都住創』コーポラティブ住宅の草分け的存在である、設計事務所ヘキサが1975年から約30年に渡って複数棟手掛けました。
施主のHさんはこの『都住創』のストックがもつ個性に魅了された一人です。「ガラスブロックや傾斜窓、一般の住宅とは異なる修道院のような光のニュアンスに惹かれて、細部まで自分の思いに近づく空間にしてみたいと思いました」(Hさん)

目指したのは「美しくあること突き詰めた、光の表情が見えるモノトーンの空間」約128㎡・メゾネットの1室を購入×リノベーションし愛猫2匹と暮らす住まいです。

ガラスに浮かぶ古建具と独特な枝ぶりの雲竜柳が印象的。床は塗膜防水下地に墨入りモルタルを施工。さらに深い黒を目指し染色した「黒い床」はHさんが一番叶えたかったこと

モルタルのヒビの奥までも黒い。表情と厚みのある"足場板"を黒く塗装した床はキッチンとサンルーム、書斎に採用している。材と材の隙間が奥深く陰影が浮かび上がる

壁は柱や梁を含め、躯体上に薄塗りしごき材による左官仕上げ。左官鏝による施工の痕跡や水分が抜けるスピードの違いで発生する色ムラを極力出さないように、複数の職人で一気に仕上げた

食器収納と間仕切壁、キャットタワーを兼ねる。「メゾネットは猫たちにとっても嬉しいポイントでした」(Hさん)

垂れ壁とガラスによって仕切られたクローゼット。シャツケース(イギリス製のアンティーク品)がリビングから見映えする高さに設計している。照明はヨーロッパの駅で使われていたもの

サイズもデザインも異なるアンティーク品の建具を塗装。建具とドアノブは全て施主支給品。「アンティーク品の建具は木が痩せて使えない場合も。扱いが難しかったと思いますが、職人がよく建付けてくれたと思います」(Hさん)

五徳のこだわりからコンロはガスクッカーの商品を採用。モルタル天板とフラットになるようにステンレスのカバーは造作加工している

壁に浮かぶ海外製のトイレ(T-form)。タンクは壁に埋込。ウォッシュレット機能はないがエッジの効いたフォルムと壁掛けの美しさを優先して採用

バルコニーやガラスブロックからそそぐ光が柔らかく拡散している

キッチンカウンター上の照明はガラス作家、ピーター・アイビーによる作品

メゾネットの上階。階段を上がるとガラスに覆われたバスルームを中心に寝室と書斎が配されている。浴室の格子枠は枠幅や割付など何度も検証した。シャワー水栓、バスタブは海外製品(FONTE TRADING)

洗面器と水栓もエッジのきいたデザインの海外製品(FONTE TRADING)ニッチ上辺には傾斜をつけている。ハンガーパイプはオリジナルで造作

下の階とは印象の異なる寝室。壁は躯体上に白塗装で仕上げた

北に面した書斎。壁面にはブリックタイルを施工した上からペンキ塗装。目地はあえて凹凸をつけラフに仕上げた。「レンガ積みされた壁から土がはみ出ている、海外で見た風景がイメージソースです」(Hさん)

家具や建具だけでなく、スイッチにも数カ所アンティーク品を採用

*植栽設計施工は荻野寿也景観設計(施主別途工事)
*RENOVATION OF THE YEAR 2020 にて特別賞「エスセティック空間リノベーション賞」を受賞
*LiVES vol.114 掲載(発行:第一プログレス)

入居者の声

以前、40平米弱の中古物件をリノベーションし10年程暮らしました。以前の住まいにも満足していましたが、今回は広さを求めて2回目の購入リノベーションです。
これから購入リノベーションを考えている人には、物件との出会いを感じたら即決することをお勧めしたい。結果的に「都住創」と出会えたから良かったですが、私自身が物件を逃す経験をしました。あとは、「これだけは絶対に叶える」と自分が一番叶えたいことを想像することが大切。色々見てしまうと思考がぶれるので、まずは叶えたいことや欲しいものを想像して、近いイメージ素材を集めるといいと思います。リノベーションでは、思い通りにいかないことも含めて選ぶことを楽しんでほしいです。

OUTLINE

案件名:H邸
所在地:大阪市
構 造:SRC造
築年月:1982年11月
竣 工:1期2017年、2期2019年
施工面積:127.75㎡

*A&Cで物件探し

*工事費:非公開

写真:増田好郎

担当者より

施主とアーキテクトが作家と編集者のような関係で進んだ住まいづくりでした。
コーポラティブ住宅である「都住創」は戸建てを積み上げたような集合住宅で、棟内に同じ間取りはなく仕上げ材も様々。ゆえに、リノベーションでは、まるで迷路な既存配管経路や特殊な設備にアーキテクトが頭を抱えることも少なくありません。ストックの持つ個性とHさんの頭の中で出来上がっているイメージをどうすれば実現できるのか。リノベーション経験者で素材の特性を理解されているHさんだからこその細部へのこだわりも多くありました。打ち合わせからピタッと思考に寄り添い、Hさんの考える「美しさ」を技術面から支える。経験値と職人の力、そして一体感のある熱量によってできた住まいだと思います。

STAFF

アーキテクト:岩田雅希
コンサルタント:岡本典子

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