
リビングは広くしたい、でもちょっとしたデスクワークができる部屋は欲しい。寝室はここ、収納はここ、子ども部屋はここ・・・平面図の上で間取りを考え出すと、どう考えてもスペースが足りない!?じゃあ広い家を買うしかない?!
でもちょっと待って。空間の仕切り方って、何も壁だけではないんです。平面図では壁に見えても室内窓があったり、開口があったり。はたまた、色や素材の切替だけで場所を分けることもできます。
使い方も人それぞれ。リビングの一角にワークスペースが欲しい人もいれば、集中できるこもれる空間が欲しい人もいる。家族と生活リズムが同じなら、ゆるく区切った寝室でもいいし、寝る時間が違うのであれば、寝室にはリビングの光が入らないように区切る方がいいこともある。また、マンションでエアコンがつけられない位置に部屋を作りたい場合、室内窓などを使って空気の通り道を確保しておくこともあります。
平面では同じ間取りに見えても、中のつながりは千差万別。空間のいろいろな仕切り方についてまとめました。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
空間の仕切り方いろいろ
室内窓を活用する
一般的には建物の中と外部の間の外壁に設置される窓。室内につけている事例もよく見かけるようになってきました。コンパクトな部屋でも、室内窓を入れて視線を抜くことで圧迫感がなくなったり、マンションの暗い玄関横に室内窓を入れると光が入ったり。個室の間にお互いの様子をちょっと覗ける窓があっても楽しい。
室内窓のデザインもいろいろ。視線を通して部屋同士のつながりをつくりたい場合は透明ガラス。視線を通さず、光だけを通したい場合は模様の入った型ガラスがオススメ。風を通したい場合は回転窓や押し出し窓。でも、開閉できる窓は金具や調整で割と費用がかかるので、窓をたくさんつけたい場合は開閉できないFIX窓と組み合わせると良いでしょう。窓枠を木で作るか、スチールで作るか、大きさはもちろん、何色にするかでも雰囲気は変わります。どんなデザインでどんな大きさ、素材がいいか、考えるだけでワクワクします。
・リビングの横に配置した子ども部屋のカウンターの前に木製の室内窓をつけた事例。黒具塗装した窓が空間をキュッと引き締めています。
・ルーフバルコニーからの眺望が魅力的なマンションの一室。寝室と、窓際にあるワークコーナーの間の壁にたくさん室内窓をつけることでコンパクトな空間ながら圧迫感のない明るい部屋になりました。
・セレクト型リノベーションTOLAにも室内窓のメニューがあります。回転窓とFIX窓を組みあわせて明るく一体感のある空間になりました。
腰壁で仕切る
腰壁とは天井まで達しない壁のこと。文字通り腰くらいの高さでちょっとした仕切りを作ることも、大人の身長より少し高いくらいの壁を作ることもあります。内部は隠しながら、壁が天井までないことで視線が抜け、圧迫感が軽減されるほか、空気の流れを作ることもできます。アートアンドクラフトではストレージや収納を作る際に使うことが多いです。腰壁は天井に固定できないので、L字型にする必要があります。
・専有面積50平米未満のコンパクトなオトナのひとり住まい。一体化した空間の中に腰壁を立てて、広い収納を確保しました。壁面はピーリング仕上げ。
・セレクト型リノベーションTOLAでは、ストレージの壁を腰壁としています。大きなストレージを確保しても圧迫感がありません。ポイントカラーを入れて、空間デザインのアクセントにも。
・ベッドルームを腰高さの低めの壁で仕切った事例。緩やかに空間が仕切られているのがわかります。腰壁の内部にはニッチをつけました。
開口だけでも面白い!
もっと緩やかに空間を仕切りたいときは、窓を作らずに開口をつくるだけも面白いアイデアです。視線が抜けることで広がりを見せることができ、部屋同士にリズミカルなつながりができるのも楽しいポイント。窓を作らないのでコストダウンできますが、空調が効きにくくなるので注意が必要です。
・イメージは有名な建築家のつくった住まい。壁にいくつも開口をあけて、個室とワークスペースが緩やかに繋がるユニークな事例です。
・間口3mの細長い戸建住宅のリノベーション事例。建物の中央にある階段の横の壁は構造的に撤去できないため、開口を開けて緩やかに空間をつなげ、細長い空間でも広く見せる工夫を試みた。
パーテションで緩やかに仕切る
壁ではなくて、空間を切り替えたいところにパーテションを立てるアイデア。スチールのパーテション、ガラスの入った木製パーテションなど、デザインや大きさはさまざま。どの程度視線を遮りたいかによってもデザインは変わってきます。
・壁付のキッチンと、タイルばりのリビングダイニング。間にスチールと木を斜めに配置したデザインのパーテションを入れ、目隠しをしつつ緩やかに空間に区切りをつけた事例です。
・新築で購入して12年過ごした自宅をリノベーションした夫婦の住まい。スチールのパーテションがダイニングキッチンとリビングをゆるく仕切っています。
・玄関に入ってすぐのところをショップのようにディスプレイしながら靴や服を収納できるスペースに。コンクリートブロックと、エキスパンドメタルでパーテションを作ってインダストリアルな雰囲気に仕上げた事例です。
床の段差や素材の切り替えを活用する
壁やパーテションで仕切るだけではありません。素材を切り替えたり、床の段差を作ったりするだけでも空間を特徴づけることができます。仕上げを切り替えることで、広いスペースにメリハリをつけることもできます。
・約60平米をひろびろ使う、オトナのひとり住まい。ベッドスペースはリビングの一角に配置。床はカーペット仕上げとし、フローリングとの仕上げの違いで段差ができています。
・ポップな色使いの60年代テイストの家具や雑貨で溢れたS さんの住まい。床の高さをグッとあげた、小上がりスペースはオレンジ色のカーペット仕上げでリラックスできる場所に仕上げました。
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空間の仕切り方はアイデア次第でこのほかにも色々!限られた空間をどう活かす?!アーキテクトが一緒にとことん考えます。こんなことできるかな?こんな空間にしたい!などお気軽にご相談ください。
大阪R不動産では、リノベーションの素材となる物件紹介もしています。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長