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大阪最古のRC造集合住宅に住まう

1932年築、「トヨクニハウス」という名で知られる、大阪最古のRC造集合住宅があります。地元に暮らし、幼い頃からこの建物に思い入れがあったというIさん。購入されたのは、40年間の空き家を経て、奇跡的に新築当時の姿をとどめていた一室でした。給排水管や電気配線といったインフラは全て整え直し、残せるものは極力のこすリノベーション。80年前の思いを引継ぎ、40年間の余白から、息を吹き返した住まいをご覧ください。

元は高級賃貸住宅として活躍していたトヨクニハウス。戦後、居住者に払い下げられ、分譲アパートになったそう。

BEFORE |奇跡的に内装は新築当時のまま。雑誌や新聞、その他細々したものが残されていた工事前の室内。

RC壁(主に水回り)と竹小舞の土壁が混在していた室内。柱や鴨居はあえて残し、床は杉材の無垢フローリングを施工。

鉄製のサッシから柔らかい陽光が差し込むキッチン。

吊戸棚は元々あったものを移設。新たに購入した食器棚やテーブルも古家具でそろえた。

飴色の玄関扉をあけると、80年前と変わらぬ丸い飾り窓がむかえてくれる。

元が浴室のない間取りだったため、試行錯誤した水回り。移設した建具の向こう、RC壁に囲まれトイレだった場所に、新たにシャワーブースを設置した。

共用部の雰囲気にあわせて選んだブラケット照明。

ピンクの壁をポイントに好きなものを詰め込んだ寝室。建具はキッチンから移設し白く塗装した。

建築当時からある違い棚には、懐かしいフィギアがずらり。

入居者の声

幼い頃、スイミングスクールの帰りはいつも、この建物の前を通っていました。ずっと身近にある気になる存在。「ここに住めるんやったら実家でるわ」と家族にも公言していたくらい(笑)。たまたま、別棟で売りに出ていた改装済み物件を内覧したのですが全くピンとこず。それならば、と見せてもらったのがこの部屋でした。壁には70年代のカレンダーが掛かり、家具やおもちゃ、当時の冷蔵庫までもが残っているという衝撃の初内覧。でも、わたしにとって、その状況こそが宝の山でした。リノベーションを考えはじめたのは「この雰囲気を残して暮らしたい!」と思ったから。A&Cの事例を知り、ここなら分かってくれると感じました。実際に住み始めてからも特に不便なく、イメージ通り。とても満足して暮らしています。

OUTLINE

物件名/I邸
所在地/大阪市都島区
構 造/RC造
築年月/1932年
竣工月/2016年5月
施工面積/43㎡

撮影:増田好郎

担当者より

建物の個性と住み手の理想がドンピシャになることは本当に難しいのですが、この家は、お互いが引き寄せあうようにして出逢ったと思います。設計では迷いなく、残せるものは極力のこし、新しい設備や造作は当時の面影を感じるデザインを提案しました。Iさんが悩んだ末に決められたシャワーブースも、間取りの大幅変更は「らしさ」を崩してしまうとの理由から。全ては「トヨクニハウスだから」という言葉に尽きます。現場では竹小舞の土壁から、職人の花形だった大工と左官工の掛け合いに思いを馳せるなど、当時を想像しながらの工事はとても楽しいものでした。これからも末永く住んで頂いて、より長く、この建物が生き続けてほしいと切に願います。(一森)

STAFF

設計監理:一森典子
コーディネーター:塩谷昌洋

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