「サツキとメイの家」を彷彿とさせる洋館付き和風住宅。庭に植えられたたくさんの植栽が四季折々の彩りを楽しませてくれます。元は施主の実家であり今年で築88年を迎えたこちらの住宅が、相続を機に新たな活用方法を探ることになりました。
多くの人が気軽に触れ愉しむことがこの建物の存在意義となると考え、住居兼店舗としての活用を見据えた計画としました。既存の姿を残すため、押入内や畳間を利用して床下など表に見えない部分で補強工事を行ない、大幅に改装が必要だった台所は飲食店にも対応できるよう二層シンクや手洗いシンクを設置。
管理に手間がかかり賃貸商品化の際にも懸念の一つとなる植栽も、今回は建築の歴史を保存するという観点からも全て残し、管理は入居者に委ねる選択をしました。
改装後は小説家と薬膳に博識のある夫婦が入居。1階で薬膳カフェを営みながら、薬膳茶のワークショップなどが開催され、新たな交流の場となりつつあります。生垣の枝が伸びたらカフェのスタッフ皆で剪定し、庭に植えられている柿の葉や金柑の実を薬膳にも利用しているそうです。
和洋折衷の外観が特徴的な建物。外装工事を行うことでメンテナンスと共に、魅力がより際立つようにした。
古い建物でよく見る広々とした玄関。内装や床のタイル、玄関収納も全て既存の設(しつらえ)のまま。
庭に面した1階の和室と縁側。この住まいの特等席とも言える。
床の間の設が美しい。
柱に貼られた十二月十二日の逆さ札。
外観の洋風な部分は応接室になっている。プライベートスペースを通らず、玄関から直接応接室に入れる間取りからは当時の住まいへの価値観が垣間見える。
書斎や物販店舗、習い事の教室など、多様な使い方が想像できる。
1階のキッチン。飲食店営業も想定し、二層シンクや手洗い器をあらかじめ設けた。
吊り戸棚などの収納は既存をそのまま再利用。
2階の和室。室内は障子や襖、畳の表替え行ったのみ。欄間や建具、板の間は全て既存再利用。
庭を見下ろす窓辺に木製の柵。
2階の洋室8畳。2階にも流し台を設置し、店舗の厨房と分けられるように想定している。
洗面所。壁の照明は当時のデザインのまま。既存の床は湿気で傷んでいたため下地からやりかえ。
元は和式便器だったが、洋式便器に交換。
浴室は既存の壁を塗装。
薬膳食材のお店・カフェ・貸しスペースとして活用されています。
庭も、入居者が楽しめる。
OUTLINE
所在地 / 池田市
構 造 / 木造地上2階建て
築年月 / 1936年
従前用途 / 住居
改装工事後用途 / 併用住宅
STAFF
企画・設計・現場監理/川本美佳
リーシング/川本美佳
その他の事例