Column
「未来の暮らし」を考え続ける実験住宅、NEXT21を見学してきました!後編
今回見学した504住居は、「和の居住文化の継承・発展」をテーマにリノベーションされた住戸です。和の住まいというと、畳や障子などの意匠を思い浮かべがちですが、この住戸が目指しているのは、「自然とともに心地よく暮らす」という日本の住文化そのものでした。
昔の日本の住まいには、風や光を上手に取り込み、季節の移ろいを感じながら暮らすための工夫がたくさんありました。縁側でごろんと横になったり、庇がつくる日陰で涼んだり、風通しの良さを感じたり。今思えば、エアコンや便利な設備がなかった時代だからこそ、自然とうまく付き合うための知恵が住まいの中にたくさん詰まっていたのかもしれません。そんな日本の住まいならではの心地よさは、現代の暮らしの中では少しずつ遠いものになっているように感じます。
504住居では、そんな和の居住文化を現代の暮らしに合わせて再構築し、次の3つのテーマを軸に住まいが計画されていました。

504住居で特に印象的だったのは、「一つのリビング」を中心としない空間構成です。一般的な住宅では、一つのリビングと複数の個室が配置されることが多いですが、504住居では、複数の居場所が緩やかにつながる「多中心」の考え方が取り入れられていました。椅子でくつろぐ場所、床に座って過ごす場所、外の緑を眺める場所など、それぞれ異なる過ごし方ができる場所が用意されており、その日の気分や暮らし方に合わせて自由に選ぶことができます。
家族みんなが同じ場所に集まるのではなく、それぞれが好きな場所で過ごしながら、互いの気配は感じられる。そんな程よい距離感が、とても心地よく感じられます。
考えてみると、私自身も家族と家で過ごす時は、いつも同じ場所にいるわけではありません…畳でくつろぐ日もあれば、テーブルで作業をしたり、少し離れた場所で一人の時間を楽しんだり、時にはソファを取り合ったり…(笑)。
なんとなく「今日はここで過ごそ〜」と、その時の気分で居場所を選んでいることがほとんどです。
住宅設計では、ついつい「どこをリビングにするか」「家族が集まる場所をどこにつくるか」と、決まった役割を持つ場所を考えがちです…しかし504住戸のように、住む人自身が自由に居場所を選べる余白をつくることも、住まいには大切なのかもしれません!
さらに面白いのは、可動建具によって「今日は広々使おう」「今日は少し仕切って使おう」と、その日の暮らし方に合わせて空間を変えられることです。家族構成やライフスタイルが変わっても、住む人に合わせて姿を変えてくれる。そんな柔軟さが、長く愛される住まいには必要なのかもしれません。

パッシブデザインとは、太陽の光や熱、風など、自然の力を上手に取り入れながら、エアコンなどの機械設備に頼りすぎず、快適に暮らすための住まいの考え方です。簡単に言えば、「自然にできることは、自然に任せてみよう!」という発想。
504住居では、日射取得や日射遮蔽、自然通風、断熱性能などを環境シミュレーションによって細かく検証し、季節ごとの自然の力をどのように取り入れるかが計画されていました。さらに興味深かったのは、エネファームや床暖房、エアコンといった最新設備だけに頼るのではなく、庇や建具、中間領域など、日本の住まいに昔から受け継がれてきた工夫が取り入れられていたことです。
夏は日差しを遮りながら風を通し、冬は暖かな日差しを室内へ取り込む。自然の力を味方につけながら、必要なところだけ設備の力を借りる。最新設備だけで快適さをつくるのではなく、昔から培われてきた日本の住まいの知恵と現代技術を組み合わせる。そんなバランスの取り方が、とても印象的でした。
また、緑豊かなバルコニーに隣接するサンルームなど、「外部と内部の中間領域」が設けられていることも印象的でした。室内なのか、屋外なのか、その間のような曖昧な場所。でも、だからこそ自然を身近に感じられて、なんだか居心地がいい。
「ちょっと外の空気を感じたいけど、わざわざ外に出るほどでもない。」そんな時に縁側のような場所が住まいの中にあるって、実はとても贅沢なことなのかもしれません。
マンションではバルコニーが単なる付属空間になりがちですが、こうした「中間領域」のつくり方は、リノベーションでもぜひ取り入れていきたいアイデアです。

504住居では、既存住戸や402号室から回収した建材、近隣から調達した未利用材などを積極的に再利用し、新しく使う材料や廃棄物をできるだけ減らす取り組みが行われていました。
私が面白い!と感じたのは、パーケットフローリングです。なんと、既存のフローリング材を下地ごと取り外し、正方形にカットしてパーケットとして再利用されていました!

そのために行われているのが、部材を壊さずに取り外す「丁寧解体」です。
一般的な解体では多くの建材が廃棄されますが、NEXT21では回収した部材の約7割が再利用可能だったそうです。もちろん、そのためには部材を丁寧に取り外すための時間や、解体方法の検討、回収した部材の計測・運搬・清掃など、多くの準備が必要になります。つまり、「再利用品を使う」ということは、解体現場だけで工夫すれば実現できるものではありません。
リノベーションでも、既存の建具や素材を活かしたいと思う場面があります。ただ、新しいものを使うよりも手間や時間がかかることも事実です。また、実際に建材を再利用した結果、従来の改修方法と比べてCO₂排出量を約8トン(約47%)削減できたことも紹介されていました。
環境に配慮した住まいづくりは、これからの時代に欠かせない大切なテーマです。
建物をつくる時から、その先の未来まで考える。将来どのように解体し、次の住まいへ受け継いでいくのかまで見据えた設計が、これからますます重要になるのだと感じました。

今回の見学を通して、
「これからの時代に求められる住まいとは?」
「これからも愛される住まいとは?」
「私たちが後世に残したいものとは?」
……などなど、気付けばとても壮大なテーマについて考えていました(笑)
見学を終えて改めて感じたのは、「良い住まいとは、新しい設備やデザインだけでつくられるものではない」ということです。
住まいは、暮らしとともに少しずつ変化し、住む人に寄り添いながら育っていくもの。そして、その先の世代にも受け継がれていくものなのだと感じました。
私たちが手掛けるリノベーションも、今の暮らしを整えるだけではなく、その先の未来まで想像することが大切です。5年後、10年後、その先も「この家に住んでよかった」と思っていただけるような住まいをご提案していきたいです。
