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「未来の暮らし」を考え続ける実験住宅、NEXT21を見学してきました!前編

「未来の暮らし」を考え続ける実験住宅、NEXT21を見学してきました!前編

先日、大阪ガスが運営する実験集合住宅「NEXT21」の見学会に参加してきました!

記事の著者

椋本智恵
Arts & Crafts アーキテクト

兵庫県宝塚市生まれ。大阪市立大学大学院修了。在学中の長屋改修をきっかけにリノベーションの道へ。ハウスメーカーで新築住宅の設計を経て、2018年にアートアンドクラフトへ入社。住宅やオフィスの設計に携わる。

NEXT21とは?

NEXT21は1993年に建てられた実験住宅です。「実験住宅」と聞くと少し難しく感じますが、実際に人が暮らしながら、未来の住まいのあり方を研究し続けている、人の暮らしや環境、時代の変化に寄り添うユニークな集合住宅です。

目指しているのは、「完成した住宅」ではなく、「変化し続ける住宅」。建物の構造体は約330年の使用を想定し、時代ごとのライフスタイルや社会課題に合わせて住戸をリノベーションしながら、未来の住まいを研究し続けています。現在も、NEXT21の理念に賛同した大阪ガスグループの社員の方々が実際に暮らしていて、日々の生活そのものが住まいづくりの研究につながっています。

ちなみに、NEXT21の顔ともいえる特徴的な外壁にも、実験住宅ならではの工夫が隠されています。

外壁には、科学的な方法で着色された5色のステンレスパネルが使用されており、ステンレスをクロム酸と硫酸の混合液に浸す時間を変えることで、『アンバー→ブルー→ゴールド→レッド→グリーン』と色が変化する性質を利用して着色されているそうです。さらに驚いたのは、その配色ルール。

隣り合う10枚のパネルには必ず5色が2枚ずつ含まれ、建物全体でも色が偏らないように配置する、という細かいこだわりが…!そのルールどおりに施工するには、かなりの手間がかかったそうです…

一見ランダムに並んでいるように見える外壁ですが、実は細かなルールに基づいてデザインされているんですね。細部まで徹底して考え抜かれた設計と、「実験住宅」であるNEXT21らしい遊び心は、リノベーションを考えるうえでもぜひ参考にしたい、と感じました。

「住まいは完成したら終わりではない」

NEXT21で最も印象に残ったのは「住まいは完成したら終わりではない」という考え方です。

建物の構造体は長く使い続けながら、住戸の間取りや設備は暮らし方に合わせて柔軟に更新していく「スケルトン・インフィル」という考え方が採用されています。子どもの成長や働き方の変化、趣味やライフスタイルなど、人生の変化に合わせて住まいも育っていく。そんな暮らしの変更に寄り添う柔軟性は、私たちが日々手掛けているリノベーションにも通じるものがあると感じました。

さらに驚いたのが、NEXT21の集合住宅では、間取りに合わせて窓まで入れ替えができるのです!一般的なマンションでは、窓の位置は建築時に決まり、その後変更することはほとんどできません。そのため、窓の位置を基準に部屋の配置を決めたり、窓をまたぐ位置に壁を配置したり、窓の配置が間取りの制約となることも少なくありません…

しかし、初めから将来の間取り変更を見据えているNEXT21では、間取りに合わせて外壁パネルを交換することで、窓の位置も変更できる仕組みになっています。「外壁部材まであらかじめ計算して設計されているのか!」と、その徹底ぶりに驚かされました。

マンションリノベーションの”常識”を変える配管システム

今回の見学で、設計者として特に興味を引かれたのが配管システムです。

マンションリノベーションでは、水まわりの位置を変更する際、パイプスペースの位置によってレイアウトが大きく制限されることが少なくありません。「ここにキッチンを移せたらもっと暮らしやすいのに…」そんな場面に出会うこともあったり…

ところがNEXT21では、各住戸の中にパイプスペースがありません。代わりに共用廊下の床下を配管スペースとして利用することで、水まわりを自由に配置できる仕組みになっています。これは、一般的な集合住宅ではなかなか見られない発想です。

「この仕組みなら、お風呂やキッチンをベランダ側に移動して景色を楽しんだりと、住まいの可能性がぐっと広がるのでは!」と、少しうらやましく感じてしまいました(笑)配管計画の自由度が高まることで、ライフスタイルの変化に合わせた間取り変更にも柔軟に対応でき、建物をより長く使い続けることができるのですね。

普段は目にすることのない配管ですが、「変化する暮らしに住まいが寄り添う」というNEXT21の考え方が、こうした見えない部分にまでしっかり反映されていることに感動しました。さらに、見学者にも分かりやすいよう、共用廊下の床下が見える構造になっているなど、見学者への配慮が随所に感じられました。

普段から現場監理を行っている私たちA&Cの設計者にとっては、完成すると見えなくなる配管計画をじっくり見ることができ、終始興味津々。思わず足を止めて見入ってしまいました(笑)。普段は見えない部分にこそ、将来の暮らしまで見据えた工夫が詰まっている。そんな設計の奥深さを改めて感じた見学でした。

建物全体が”暮らしの実験場”

NEXT21では、住戸だけでなく建物全体が実験の場となっています。

見学してまず印象的だったのは、建物全体に豊かな緑が取り入れられていること。屋上やバルコニー、中庭には多くの植物が植えられ、建物内とは思えないほど自然を身近に感じられました。野鳥の飛来も観測されており、居住者・鳥や植物の専門家・地域の人々をつなぐ場所となる活動が認められ、2024年度には緑地関連の2つの賞も受賞されているそうです。

また、一般的な集合住宅では、日当たりの良い南側にLDKやバルコニーを配置することがほとんどですが、 NEXT21ではその”当たり前”を覆し、なんと南側を共用廊下と緑地エリアに充てているのです!「集合住宅は、一つの立体的なまちである」という考え方のもと、共用廊下は単なる通路ではなく、人や自然が出会い、交流が生まれる「立体街路」としてデザインされています。

立体街路を含む共用部は、地域の方がふらっと立ち寄れる「開かれた空間」でありながら、入居者にとっては暮らしの延長として自由に使える場所になっています。共用廊下でバーベキューを楽しんだり、好きな場所で思い思いの時間を過ごしたりと、一般的なマンションの共用部とは異なる使い方ができるのです。

設計者として特に印象に残ったのは、「住戸」ではなく「建物全体」で暮らしをデザインしていること。リノベーションではどうしても住戸の中に目が向きがちですが、共用部まで含めて暮らしを考えることで、住まいの価値はもっと広がります。また、どこかの共用スペースが利用されていても各場所へ行き来できるよう、複数の階段が設けられていることも魅力的です。

階段ごとに屋根の有無や日当たりが異なるため、「今日は雨だからこちらから行こうかな。」そんなふうに、その日の気分で歩くルートを選べるのも楽しそうですね。

第6フェーズでの挑戦

現在、NEXT21では「第6フェーズ」と呼ばれる実証実験が進められています。

テーマは、「まちで集まって住む意味を再定義する」。

暮らしが便利で効率的になる一方で、人とのつながりや自然との関わりが少しずつ薄れている現代。NEXT21では、そんな時代だからこそ、「本当に豊かな暮らしとは何か」を見つめ直し、新しい住まいのあり方を探っています。

具体的には、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用や、省エネと快適性を両立する温熱環境の検証、建材を再利用するサーキュラーデザインなど、建物の性能や環境面に関する研究が行われています。さらに興味深かったのは、設備や技術だけではなく、「入浴」や「食」といった日々の行為そのものまで研究対象になっていることです。

例えば、お風呂は単に体を洗う場所ではなく、心身を整え、リラックスするための時間でもあります。キッチンも、料理をするためだけではなく、人が集まり、自然と会話や交流が生まれる場所でもあります。住まいを考える時、間取りや性能といった目に見える部分だけではなく、そこで過ごす時間や体験までデザインすることが、これからますます重要になるのかもしれません。

リノベーションにおいても、どんな空間をつくるかだけではなく、「その場所でどんな時間を過ごしてほしいのか」という暮らし方を想像することが大切ですね。

▷後編につづく