【コラム】木造戸建ての耐震化工事

text=枇杷健一(Arts&Crafts 設計監理部門マネージャー)

平成28年度の大阪市耐震改修促進計画で大阪市の木造戸建ての耐震化率を調べてみたところ予想より高く64%でした。えっ!ホンマ?と思い詳しく見れば1982年の新耐震基準以降に建った家はひとくくりに耐震性がある住宅として評価されていました。

一方、新耐震基準以前に建った家の総数は約12万戸弱でそのうち耐震性がある住宅は2万戸で約17%と少ないです。データでは耐震性がある・ないの評価を1982年の前か後かで分けていますが、現場目線では築年数が浅くてもバランスが悪く耐震性が不十分で危険な家はありますし、築年数不詳でも、大工さんの丁寧な仕事が見て取れる耐震性が十分で安全な家もあります。

普段の実務では一概に築年数だけではなく、個々の建物の状況と所有者の維持管理状況も勘案して耐震性を評価することが多いので大阪市の耐震化率には少し違和感を感じてしまいます。

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人力で梁の入替え作業中。他に柱の入替え、耐力壁追加、新規基礎など新築基準同等の耐震化工事を自社の再販物件で実践


大阪市の耐震化率の現状はさておき、これから木造戸建てでリノベーションを考えている方は耐震化工事にも少し目を向けて、「同時期の実施」をぜひオススメします。

と言うのも、耐震化工事単体にかかる費用を見てみると解体費に20%・耐震補強費に40%・復旧費に40%といった内訳となる場合が多く、注目したい点は「剥がすこと貼り直すこと」に総額の60%が掛かっているということ。
いつ起こるかわからない地震に対する耐震化工事が勿体なく思え、費用負担に踏み切れないという傾向が、特に持ち家の方に多く見られます。

でも、リノベーション工事と同時に行えば、間取りの改変や仕上げ材の更新など、「剥がすこと貼り直すこと」は一度で済み、単体の耐震化工事と比較すればコストを抑えることができて耐震化工事のタイミングとしては合理的な訳です。

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アートアンドクラフトの木造戸建ての耐震指針

続けて、アートアンドクラフトが考える木造戸建ての耐震化工事についてもう少し掘り下げていきましょう。冒頭で書いた通り、木造戸建てをまるっとひとくくりに語ることは困難で実務では建物毎の精査はもちろん必要ですが、これまでの木造戸建ての改修実践を元に「現実的な費用で実施可能かつ効果的な耐震化」の方法から、「時間もお金掛かるが、構造建築士も太鼓判を押す現行法最高水準の耐震等級3を目指す耐震化」まで、ユーザーにできるだけわかりやすい目線で6つの選択肢を軸に方針決定をしやすいように「耐震指針」をまとめています。

建物毎の状況やリノベーション予算は様々です。目指す耐震化工事の設定やそれに必要な時間や予算、そこから得られる恩恵をふまえ、ユーザーが理解と納得をし方針決定することで、建物全体の耐震化まではしなくとも、”就寝時の倒壊被害からは逃れるため寝室にはシェルターを設置”、”浮いた予算は間取り変更や仕上げ材にまわす” など予算に優先順位をつけて、耐震化とデザイン的な部分への予算配分イメージもわきやすくなるはずです。

木造戸建てリノベーションを考えているけど、大きな地震のニュースがある度に、耐震性能に不安を抱いていた。耐震化工事についてもっと詳しく聞きたい方はぜひご相談ください。