本来は仕上げ材の下地に使う素材。でもよくよく見ると、そのままでもカッコいいかも?!施工現場を見ていると、そんなことに気づいたりもします。仕上げ材に使うことを想定していないことが逆に、不揃いだったりそのままの素材感が感じられたり、、また、下地をそのまま仕上げとして見せてしまうというアイデア自体が、リノベーション空間にちょっと楽しみが増します。材料によりますが、仕上げをしない分、コストダウンができることも魅力。下地材をデザインに取り入れた事例を紹介します。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
目次
仕上げに使える下地材いろいろ
薄塗りモルタル材
まず初めは薄塗りモルタル材。従来のセメントモルタルよりも薄く塗れるよう結合材にセメントのではなく主に樹脂を用いて作られた左官材で、従来はコンクリートの補修や、塗装前の下地調整などで使われます。「カチオン系」と呼ばれるものを使うことが多いですが、これは電気的な接着性を発揮するカチオン特性を付加した薄塗りモルタル材のこと。「カチオン」とは陽イオンのことで、モルタルやコンクリートは「アニオン」と呼ばれるマイナス電荷を持っているので、相互に引きつけ合い、密着性や接着力が強くなるのです。
薄くて軽いため、石膏ボードなどの上にもモルタルの質感を表現する施工ができ、ひび割れがしにくい特徴がありますが、セメントモルタルと比較すると骨材が潰れやすいのでものを落としたりする可能性がある床には向きません。
薄塗りモルタル材を仕上げにした事例
・リビングダイニングとエントランスの壁面を薄塗り用の薄塗りモルタル材で仕上げた事例。小さなニッチまでシームレスに施工しています。ビニール素材は使いたくない、というご要望で数種類の左官と塗装で質感のある住まいに仕上げました。
ラワン合板
続いてご紹介するのはラワン合板。丸太をスライスして重ねた「ベニヤ板」の中でも最もよく使われてきたものです。家具や壁を作る際の下地として使われていた他、押し入れなど内部でそのまま使われている状態はイメージしやすいかもしれません。一般的には下地材ですが、以前から一部の建築家でラワンを仕上げに使う人もいました。プリント合板にはない自然な木目と、素朴な表情。そこに魅力を感じて最近ではリノベーションでもラワン合板仕上げを使うことも増えています。
注意したいのは、あくまでも下地材なので、色や木目の入り具合が安定していない時があること。材料を発注して納品されるまでどんなものが来るかはわかりません。少し多めに発注して使うものを選定し、並べ方などを現場で指定しながら施工することで調整をできるだけ行うようにしていますが、その分ロスがでたり、手間代がかかってしまいます。納品される材料によって表情が少し違ってもそこが面白い!と思える方には魅力的な素材だと思います。
ラワン合板を仕上げにした事例
・キッチンの面材をラワン合板で仕上げた事例。扉の周りには角材を回し木のつまみをつけて、食洗機の面材にもラワン合板を使用。ラワン合板のラフな素材感を調整しながら、家具のように見えるキッチンをめざしました。
・toolboxの定額制リノベーションパッケージ「ASSY」で作った一室。ラワン合板の木質と躯体現しの天井でラフな雰囲気に仕上がりました。
木毛セメント板
続いてご紹介するのは木毛セメント板。リボン状に細長く削り出した木材をセメントペーストで圧縮成型した建材です関東大震災の後、耐火性のある建材が求められた際に塗壁の下地用の建材としてドイツから輸入され使用されるようになったそうです。
工業的に見えますが、木・水・セメントのみで作られていてホルムアルデヒドなどの化学物質の発生の心配がなく、調湿性があって実は身体にやさしい素材。耐火性があり、断熱性や遮音性にも優れ、軽くて加工がしやすいという実はメリットがたくさんある素材でもあります。
木毛セメント板を仕上げとして使った事例
・天井を躯体現しにしたいと希望していましたが、購入したのはひな壇型のマンション。リビングの上が上階のバルコニーとなっていて断熱材が施工されていたために断念。モルタルの表情も併せ持つ木毛セメント板で仕上げることにしたことで、表情豊かな空間が完成しました。
・鉄骨造の戸建てのリノベーション事例。3階から屋上につながる塔屋の部分は、縞後半の踏み板と木毛セメント板でラフに仕上げました。
フレキシブルボード
最後にご紹介するのはフレキシブルボード。セメントと補強繊維を混ぜ合わせて整形した不燃ボードの一種で、戸建て住宅の軒先やビルドインガレージの壁などにもよく使用されます。外装にそのまま使われることはありますが、内装でそのまま使われることはあまりなく、下地材としての利用が一般的です。セメントを固めたものなので、モルタル仕上げのような質感が表現できます。壁や床に使用でき、土間仕上げにしたいけれど下に配管があって埋めてしまうのは心配、、などというときにも採用することがあります。硬く、カットに手間がかかる(電気鋸の歯をいためてしまう)ため、加工が多い、小さな面積や複雑な加工が必要な場所では利用が難しい場合があります。
フレキシブルボードを仕上げとして使った事例
・暮らしの中で働く住まい。働く空間は軽作業も可能なように、フレキシブルボードで仕上げて遠慮なく使える空間としました。
・建築家の住まいを参考に壁をくり抜いた遊び心のある住まい。洗面は脱衣室から廊下に出し、キッチンも大きく移動したため、廊下とキッチンをつなぐ部分はフレキシブルボードで床上げをしてその下に配管を仕込みました。
ー
仕上げとして使うといつもとは少し違う表情を見せてくれる、下地材たち。設計者が現場監督までつとめるアートアンドクラフトだからこそ思いつくアイデアもたくさんあります。楽しみながらリノベーションの計画をしたい!という方はぜひお気軽にお問い合わせください。
また、大阪R不動産とLINEではリノベーション向けの物件を紹介しています。ぜひご覧ください!
ー==============ー
文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長