築40年を超える古いマンションってあと何年住めるの? - リノベーションコラム

「築40年のマンションを買ったら、あと30年とか住めるんですか?」

物件探しをしている方によく聞かれるのがこの質問。確かに、築年数が経ったマンションは予算的にも魅力的。でも不安に思うことも多いですよね。ただ、漠然と「築年数が古いと不安…」と思っていても前に進めません。気になるポイントを整理してひとつずつ検討して納得しながら「自身は何を選択するか」を考えましょう。

築年数の古いマンションの不安に思うポイント

1) そもそも鉄筋コンクリートの住宅って何年もつの?

2) 耐震性が不安

3) 目に見えない不具合がないかが不安

4) 建て替えされないか不安

5) 将来的に売却できるかどうかが不安

以下で順番に詳しくみていきます。

 

1. そもそも鉄筋コンクリートの住宅って何年もつの?

コンクリート住宅の耐用年数は47年と目にしたことがあるかもしれません。これはあくまでも税法上、減価償却を計算するための数字。実際に47年でコンクリート住宅が崩れ始めるわけではありません。(木造住宅の税法上の耐用年数はなんと22年です。実際建物がどれだけ使えるかの参考にならないことが分かりますね)

日本で初めての鉄筋コンクリートの建物は1911年に建てられた三井物産横浜ビル(現在はNK日本大通ビル)で、築110年を超えた現在も現役でオフィスとして使われています。分譲マンションとしてはは1953年に東京都が分譲した「宮益坂ビルディング」が日本初。

その後、東京では1960年代からマンション建設ラッシュが始まりました。関西では少し遅れて1970年ごろから分譲マンションが多く建てられるようになりました。かなり初期に建てられた分譲マンションでもその歴史はまだ約60年。そのため、築80年、90年、100年になったときにどうなるのか、という不安に応えられる事例は日本国内では今のところありません。

ただ、建物が適切にメンテナンスされ、立地がよくて魅力のあるマンションはマンションブームの頃に建てられた建物でも多くの取引事例があります。例えば西宮市の「メゾン甲子園」というマンションは1968年に新築されていますが、現在も住民が積極的に修繕を行いながら管理されていて、その立地や風格のある佇まいから、現在でも販売物件が出ればすぐに売れる人気のあるマンションになっています。この辺りは参考にできるひとつの事例かと思います。

余談ですが、欧米などではそもそも「建物に耐用年数がある」という考え方自体があまりないそうです。日本とは風土も建物の作り方も地震の有無も違いますが、ここまで考え方が違うのは面白いですね。

▶︎松村秀一先生の『建築の明日へ』に面白いエピソードが掲載されていました。

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きちんと確認するべきは管理状態

では、何を基準に判断するかと言えば、よく言われるように重要なのはその建物の「管理状態」です。新しい建物でも、適切にメンテナンスされていなければどんどん傷んでいきます。一方、古い建物でも不具合が出れば都度修繕すれば、建物を良い状態を保つことができます。

過去にどんな修繕を行っているかは、管理会社に請求すると取得できる「管理に関する重要事項の調査報告書」という書類で確認することが可能です。そしてもちろん、修繕には費用が必要なので適切な金額の修繕積立金の徴収があり、積立額がきちんと貯まっていることを確認しておきましょう。

 

 

2. 耐震性が不安

次は耐震性について。耐震基準に対する法令上の決まりの大きな境目は1981年6月1日です。この日以降に建築確認がされた物件は「新耐震」、それ以前の物件は「旧耐震」と一般的に呼ばれています。その後、何度か改正されて今現在の耐震基準になっています。

耐震基準はあくまでも最低基準ですので、旧耐震の物件は必ず地震の揺れに弱いというわけではありません。また、新耐震の物件でも形が不正形だったり管理状態が悪くて傷んでいるところがあったりと、必ずしも地震の揺れに強いというわけでもありません。地盤やどんな地震の揺れかによっても被害の程度は変わります。

▶︎関連コラム:新耐震だったら安心?旧耐震だったらダメなの?

 

とはいえ、耐震性能に対する不安が強い人は、やはり新耐震基準の物件を選ぶ方が良いでしょう。立地や広さなどが仮に同じ条件だったとすれば、新耐震の物件の方が旧耐震より金額はあがります。そのため、耐震基準を重視するのであれば、面積は少し希望よりも小さいものを選ぶ、希望よりも駅から少し距離が離れても許容するなど、他の条件を譲歩しながら物件を決めていきましょう。

耐震性も気にはなっても、価格や利便性、広さを重視したいという場合は旧耐震基準の物件も含めて検討するのは選択肢の一つです。

 

 

3. 目に見えない不具合がないかが不安

他によく聞くのは、目に見えない部分で建物に不具合がないか不安という声です。特に、配管への不安を耳にすることが多いように思います。

ここで理解しておきたいのは、区分所有建物であるマンションは「共用部分」と「専有部分」に分かれるということ。

共用廊下や階段、エレベーター、エントランスのほか、コンクリートの壁や床スラブ、共用の縦配管、バルコニー、玄関扉などは共用部分に含まれます。この「共用部分」については基本的に管理組合が管理をする部分なので、万が一不具合があっても管理組合の負担で修繕をします。また、きちんとメンテナンスがされているかどうかは、前述した「管理に関する重要事項の調査報告書」や、管理員への聞き取りで確認することが可能です。

一方で、コンクリートの壁で囲まれた室内部分は「専有部分」と呼ばれ、区分所有者が管理をする部分となります。室内の内装や設備はもちろん、配管も区分所有者の判断にて更新が可能な部分なので、例えば古い配管からの水漏れに不安がある場合などは全て更新することが可能です。私たちがリノベーション工事に入る際にも、水漏れにつながりやすい配管(鋼管や銅管など)が見つかれば多少予算がアップしても交換をおすすめしています。

一部修繕や取り替えができないことがあったりと、何もかも新築同然というわけにはいきませんが、修繕できる範囲と状態をそれぞれ確認し、それでも不安があるのか、納得できる状態なのかを判断しましょう。

 

 

4. 建て替えされないか不安

せっかくリノベーション工事をしたのにマンションに建て替えの話が出たら、という不安も聞きます。

結論から言うと、建て替えがされる可能性はあまり高くはありません。国土交通省の調査によると、2021年4月1日現在で国内で建て替えられた区分所有マンションの累計数は270棟、工事中や実施準備中は全国で46棟です。ここからも、かなり実施数が少ないことが読み取れます。

その理由は以下の2点です。

1点目は、そもそも住民の合意を取ることが難しいこと。分譲マンションの建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。区分所有者それぞれ、年齢や経済状態、家族構成も違います。建て替えが完了するまで長期間仮住まいが必要になることや、新しい住戸を得るために負担金が発生することも多いことなどから、賛成多数の決議をするのはかなり難しいのが現状です。

2点目は、建て替え事業のスキームにあります。郊外の団地など、大きな敷地に余裕を持って建てられた一連の建物の場合、容積率にかなり余裕があるので、大規模なマンションに建て替えることで元の団地よりも分譲戸数を増やすことが可能です。こういった場合は、不動産ディベロッパーが参画して建て替え計画を立て、余分にできた住戸を販売することで利益を確保します。一方、都心部のコンパクトな敷地に建つマンションの場合、すでに容積率がいっぱいだったり、既存不適格でオーバーしていたりするため、戸数を増やすのは難しい場合がほとんどです。そういった物件は建て替えを積極的に行う事業者がおらず、計画が実現しにくいという事情があります。

これらの事情から、多くマンションの管理組合では、建て替えを検討するよりも維持管理に力を入れて、長く建物の状態を維持することを目指して修繕計画を立てているところがほとんどです。

 

 

5. 将来的に売却できるかどうかが不安

最後は、将来築年数がもっと古くなった場合に売却ができるのか、ということ。

前述したように、築50年を超えても建物の管理状態がよく、立地条件が良ければ十分に取引事例はあります。 また、私たちでサポートさせていただいた方の中には昭和32年に立てられたコンクリート住宅を購入してリノベーションした事例もあります。

正直なところ例えば30年後に購入した物件の売却がどのくらい容易にできるか、そしてどんな価格で取引されるかはわかりません。築年数が古くなることもありますが、人々がその時にどんな物件を欲しがるか、その時の相場もわかりませんし、何か大きく社会の仕組みが変わっているかもしれません。

もう少し近いスパンで「10年後くらいに売却の可能性があるかも」と考えている場合は、まずは今の時点で人気のある立地をできるだけ選びましょう、というお話をしています。利便性が高く環境が良く人気がある場所は不動産の流通がスピーディです。何か想定できない突発的なことがない限り、なかなか10年程度でその場所の価値が変わることは考えにくいためです。

逆に、現時点でも人口が減少しているのに新築物件がどんどん建てられて、安い価格で分譲されているようなところで築年数の古い物件を購入するのは資産性の観点からいくと避けた方が良いかもしれません。

もちろん、立地だけではありません。眺望や周辺環境、建物自体の魅力など、”定性的”な要素も重要です。例えば、大阪市内でリバービューのマンションは築年数が古くなっても人気が落ちることがなく、販売に出ればすぐに売れています。資産性を気にしすぎるより、自身が心地よいと思う物件を選べば、将来的にも気に入って購入したいという人が出てくることはじゅうぶん考えられます。

 

 

築年数の古いマンションのメリットは?

さて、築年数の古いマンションでよく言われる不安点とそれぞれに対する考え方を見てきましたが、逆に築年数の経った物件を購入するメリットを考えてみます。

無理のない資金計画が組める

ひとつ目はやはり、価格が抑えられること。ギリギリまで予算を増やして築年数が新しい物件を手に入れることを安心だと考える人もいますが、築年数の条件を譲ることで月々の出費をグッと抑えたり、手元に資金を残しておくことを安心だと考える人もいます。考え方は人それぞれなので、どちらが自身にとって安心できる選択なのかをよく考えてみましょう。

便利な立地の物件が多い

駅のすぐ近くには古いマンションが多いな、と思ったことはありませんか。特に少し郊外になるとこの傾向が顕著ですが、電車の駅の近くからだんだんと開発が進んでいったためだと考えられます。立地を重視するのであれば、築年数の条件は少し譲っても良いかもしれません。

住人同士のコミュニティが熟成されている

長く一緒に生活している分、住民同士の関係が良好で良いコミュニティができているマンションもよくあります。こちらも好みは人それぞれですが、セキュリティが厳しく、隣に誰が住んでいるのかわからない、といったマンションよりも人の関係がある方が安心、と考える人もいます。

個性的で面白い建物が多い

最後は建物自体に関して。1990年頃になると、だんだんとマンションはこう建てるという形が定まってきて、全国に同じような外観、間取りの建物が建てられることが多くなってきました。一方、マンションが建ち始めた当初はそれぞれ試行錯誤しながら建てられているので、外観や共用部のデザインがとても素敵だったり、間取りがひとつひとつ違ったり・・個性的な建物が多く見られました。

均質化されたマンションの一室よりも、ちょっとユニークな建物に暮らしたい方は少し古い物件の方が面白い出会いがあるかもしれません。

 

 

築何年まで住めるのか、という疑問に明確な答えはありません。不安がなかなか払拭できないのであれば比較的新しいマンションを検討する方が良いでしょうし、建物の状態などを調べることである程度払拭できるのであれば検討の候補に入れるのも良いでしょう。

何を重視して物件選びをするかはその人の考え方次第で様々です。漠然と不安におもって避けてしまうよりは、ひとつずつ不安点をクリアにしながら検討をしてみると、自分に合った物件選びができるようになってきます。

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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長

 

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