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残すだけじゃない!琴平・高松のリノベのその先

残すだけじゃない!琴平・高松のリノベのその先

香川視察旅行の第二弾!今回は琴平・高松編です。古い建物を活かしたホテルやお店、アトリエなど、今回も気になる場所が盛りだくさん!建物のリノベーションはもちろん、そこから生まれる新しい活動や人とのつながりにも触れることができました。

記事の著者

椋本智恵
Arts &Crafts アーキテクト

兵庫県宝塚市生まれ。大阪市立大学大学院修了。在学中の長屋改修をきっかけにリノベーションの道へ。ハウスメーカーで新築住宅の設計を経て、2018年にアートアンドクラフトへ入社。住宅やオフィスの設計に携わる。

今回、琴平をご案内いただいたのは、以前A&C事務所でもトークイベントを開催してくださったビーフン・デザインの進藤さん!実は進藤さん、1日目の三豊視察からゲストとしてご参加いただいていました。

懇親会では、進藤さんとつながりのある琴平のさまざまな業種の方々とも交流。まちづくりへの想いはもちろん、琴平や三豊で暮らし、活動する中での葛藤まで、普段なかなか聞けないリアルなお話を伺うことができました!建物や町並みを見て回るだけでは分からない、その土地で暮らす人たちの想いや背景。そんな生の声に触れられたことで、琴平や三豊という町への理解がぐっと深まったように感じます。

785段の石段に挑戦!『金刀比羅宮』

視察旅行2日目は、なんと朝5:45集合!早起きして向かった先は、「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮。なぜこんなに朝早くから?というと…

実は、金刀比羅宮では毎朝6時に「時太鼓(ときだいこ)」を打ち鳴らし、時刻を知らせる伝統があるのだそう。鐘ではなく、太鼓なんですね!これはぜひ生で聞いてみたい!ということで、一同早起きして向かいました。

石段を約360段登った大門の手前には、1710年に建てられた「鼓楼(ころう)」があり、古くから朝夕に太鼓を打ち鳴らして時刻を知らせてきたそうです。

さて、そんな金刀比羅宮は、象の頭に似た形の象頭山(ぞうずさん)の中腹に位置し、古くから「海の神様」として親しまれてきた神社。御本宮まで続く石段は、なんと785段!なかなかの段数ですが、参道沿いには土産物店や飲食店がずらりと並び、日中は寄り道しながら登るのも楽しそう。

石段に沿ってお店や建物が連なる風景は、昔から多くの参拝者を迎えてきた門前町ならでは。境内には江戸時代から明治時代にかけて建てられた歴史ある建築も残っています。

何百年も前の人たちも、こうして石段を登り、同じ場所を目指していたのかと思うと、なんだか感慨深いものがありますね。時代が変わっても、人々が訪れ、建物や町並みが受け継がれていく。そんな歴史の積み重ねを、今も身近に感じられる場所です。

そして、参道の途中にある旭社(あさひのやしろ)の前には、ちょっと気になる水がめを発見!なんでも、水面に1円玉を浮かべることができれば願い事が叶うのだとか。こんなちょっとした運試しも、参拝の楽しみのひとつです。

おばあちゃんの家をゲストハウスに『ニュー・お染』

せっかくの視察旅行なので、宿泊先もリノベーション物件に泊まりたいですよね。

1日目の宿泊先のひとつは、進藤さん率いるビーフン・デザインさんが手がけたゲストハウス『ニュー・お染』。金刀比羅宮への参拝客も訪れる琴平のまちなかにあり、もともとは「お染おばあちゃんの家」と呼ばれていた空き家をリノベーションしたそう。私は『ニュー・お染』宿泊チームではなかったので、気になる室内の様子はこちらから!

▶ニュー・お染の詳細はこちら

室内の写真を見てみると、まるでおばあちゃんの家に遊びに来たような、どこか懐かしい雰囲気。宿泊者同士が交流できる共用リビングやキッチンを備え、既存のピーリング壁やジプトーン天井もデザインの一部として活かされています。

こうした昔ながらの内装材をあえて残し、空間の個性として取り入れているところが面白い!古いから取り替える、ではなく、古いからこそ活かしてみる。見方を変えるだけで、何気ない素材も空間の魅力となっています。そんな、既存の建物の魅力を再発見できるのも、リノベーションの醍醐味ですね。

元は魚屋!『NINE STORIES HOTEL』

金刀比羅宮の早朝参拝を終えたあとは、ビーフン・デザインの進藤さんと琴平バスの代表の楠木さんから、琴平のまちづくりについてお話を伺いました。

そして、進藤さんの案内で向かったのは、金刀比羅宮の参道近く、川沿いに佇む『NINE STORIES HOTEL』。こちらは、もともと魚屋だった建物をリノベーションした宿泊施設です。1階にはワッフルやかき氷を楽しめるお店が入り、2・3階はそれぞれ独立した客室に。金倉川に向かって設けられたカウンター席は、外の空気を感じながら過ごせる、なんとも気持ちのよい場所!

そして、建物の外観もなかなか個性的。道路側はアールを取り入れたデザインと植物が印象的で、思わず足を踏み入れたくなるような雰囲気。一方、橋から眺める川側は、コンクリートの無機質で歴史を感じる佇まい。

今回は客室内は拝見できませんでしたが、窓からは象頭山や川の景色が楽しめるそう。各客室にはキッチンも備わっているので、地元の食材を買って料理をしたり、部屋でゆっくり過ごしたり。観光地に泊まるだけでなく、琴平で暮らすような時間を楽しめるのも魅力的ですね。

そして、かつて町の魚屋として使われていた建物が、今では観光客を迎えるホテルになるなんて、面白い!昔はどんな店構えで、どんなふうに使われていたんだろう?魚屋時代の姿も、ぜひ見てみたくなりました。

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不動産屋さんがかき氷屋さん!?『ひだまりあぱーとめんと』

琴平のまちをぶらぶら歩いたあとは、高松市へ移動し、香川県を拠点にリノベーションを手がけるひだまり不動産の物件を見学させていただきました。

代表の内海さんにご案内いただき、まず伺ったのは、賃貸マンション『パークハイム観光町』。こちらは、古い賃貸マンションの住戸だけでなく、共用エントランスもリノベーションされた建物です。

建物の顔となるエントランスには、木調の本棚や机、椅子、扉などが取り入れられ、温かみのある空間に。足を踏み入れた瞬間、まるで家に帰ってきたようなホッとする雰囲気が感じられます。毎日通るエントランスがこんな空間だと、帰ってくるたびにちょっと気分が上がりますよね。

そして、特に印象に残ったのが、1階の庭のお話。実は、各住戸に設けられていた専用庭が、入居者の方にとっては管理の負担になっていたそう。そこで、一人の入居者からの相談をきっかけに、みんなで使える屋外スペースへと改装することに。その後も入居者の声を聞きながら少しずつ改装を進めていくうちに、気づけばすべての専用庭が共用スペースに!

一人のちょっとした困りごとから始まり、みんなの声を取り入れながら場所が変わっていく。なんだか、まちづくりにも通じる面白さがありますね!

続いて見学したのは、お隣の『ひだまりあぱーとめんと』。こちらは、もともと住居だったアパートをリノベーションし、住宅だけでなく、事務所や店舗など、さまざまな用途が集まる複合施設へと生まれ変わった建物です。そして、この建物には「ひだまり不動産」さん自らが運営する『ひだまりかき氷スタンド』まで!

不動産屋さんが、かき氷屋さんも!?

単にテナントを誘致するだけでなく、自分たちでお店を運営し、人が訪れるきっかけまでつくっているんです。庭の使い方を見直したり、自らお店を始めてみたり。建物をリノベーションするだけでなく、そこで過ごす人たちのことを考えながら、新しい使い方を生み出していく。そんな「ひだまり不動産」さんの柔軟な発想と取り組みに、私たちもたくさんの刺激をいただきました。

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昭和の独身寮が、ものづくりの拠点に。『TAKAMATSU JAM 4.5』

続いて内海さん・進藤さんと訪れたのは、『TAKAMATSU JAM 4.5』。なんとこちら、もともとは建設省の独身寮だった建物。ひだまり不動産が改修・運営、ビーフン・デザインが設計を手がけ、複合施設として生まれ変わりました。 

施設名にある「4.5」という数字。実は、かつての独身寮の個室が四畳半だったことに由来しているそう。その四畳半の個室は、現在では作家さんやクリエイターのアトリエ、小さなお店などに生まれ変わっています。小麦粉袋を再利用したバッグのお店や、キャンドルショップなど、並ぶお店も個性豊か。

四畳半というと少し狭く感じますが、一人で何かを始めるには、むしろちょうどいい広さなのかもしれません。ちなみに、もう少し広さがほしい場合は、隣り合う2室をまとめて使うこともできます。

さらに、もともと寮の食堂だった1階には、シェアキッチン『みんなのキッチンJAM』が。厨房設備を共有することで、初期投資を抑えながら飲食店の開業に挑戦できる場となっています。さらに、建物内には、木工やものづくりを楽しめるDIY工房まで!かつての独身寮が、今ではさまざまな人の「やってみたい!」を応援する場所になっているんです。

そして、上階へ進むと、また違った光景が!階段から廊下、部屋の中まで、色鮮やかなアートが広がっています。青く染められた廊下に、壁いっぱいに描かれたシャチなど、部屋ごとに異なるアートが!

建物の壁や天井が、そのままアートのキャンバスになっているのも面白いですね。四畳半の小さな部屋も、かつての食堂も、古い壁や天井も。見方や使い方を変えることで、こんなにも新しい可能性が広がるんですね。

▶TAKAMATSU JAM 4.5 の詳細はこちら

さいごに

今回の香川視察では、さまざまな建物や場所を訪れましたが、どの場所にも共通していたのは、建物を活かすだけでなく、そこから生まれる人の活動やつながりを大切にしていること。そして印象的だったのは、その土地で活動する方々が、それぞれの想いを持って楽しみながら挑戦を続けている姿でした。

古い建物を残しながら、新しい使い方を見つけ、そこに人が集まり、また新しいことが始まっていく。建物をリノベーションして終わりではなく、その先に広がる可能性こそが、リノベーションの面白さなのかもしれません。そんなことを改めて感じた、刺激いっぱいの香川視察旅行となりました!