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石だけじゃない。思い出まで埋め込める「ビールストーン」

石だけじゃない。思い出まで埋め込める「ビールストーン」

リノベーションの打合せをしていると、「この素材、こんなことまでできるんだ!」と、設計をしている側までワクワクしてしまう素材に出会います。

今回ご紹介するのは、そんな素材のひとつ、BEAL社の「ビールストーン」。ぱっと見は、大理石のような上質な仕上げ。でも実はこの素材、よく知れば知るほど「え!それ、入れていいんですか!?」と言いたくなるような、遊び心のある左官材料なのです。

記事の著者

椋本智恵
Arts &Crafts アーキテクト

兵庫県宝塚市生まれ。大阪市立大学大学院修了。在学中の長屋改修をきっかけにリノベーションの道へ。ハウスメーカーで新築住宅の設計を経て、2018年にアートアンドクラフトへ入社。住宅やオフィスの設計に携わる。

ビールストーンとは?

ビールストーンは、天然石や鉱物などの骨材を混ぜ込み、表面を研磨して仕上げる左官材料です。

イメージとしては「研ぎ出し」や「テラゾ」の仲間。特殊セメントに骨材を混ぜ込み、研磨することで中の石を表面に現し、独特の表情をつくります。実は、ベースとなる特殊セメントは、あのモールテックスと同じものだそう。樹脂を混入した特殊なセメントをベースとしているため、下地の動きにある程度追従できるのも特徴です。

ただし、モールテックスの塗厚が約2〜3mmなのに対し、ビールストーンは約8mm。「薄く塗って素材感をつくる」というより、厚みのある素材の中から、石の表情を掘り出していくような仕上げです。床や壁はもちろん、キッチンやテーブルの天板、家具や什器、浴室など、使える場所は意外といろいろ。現場で形に合わせて施工できるので、継ぎ目の少ないシームレスな仕上がりもつくれます。

遠くから見ると、すっきりとした一枚の面。近づいてみると、「こんな石が入ってたのか!」と、一粒ずつ違う表情が見えてきます。
ついつい、近づいて眺めたくなる仕上げです。

何を入れるかで、空間の表情が変わる

ビールストーンの面白さは、なんといっても骨材の自由度。

石の大きさや量、形、入れ方によって仕上がりが大きく変わるため、同じものはふたつとしてできません。骨材や顔料のバリエーションも豊富で、さらに正規品の骨材以外にも、お気に入りの石やガラスなどを自由に加えられます。例えば、真鍮でつくったロゴや金属片を入れたり、暗くなると光る石を忍ばせたりすることもあるそう!

「こんなものを入れたら、どうなるんだろう?」

そんな発想が、そのままデザインにつながっていくのがビールストーンの魅力です。

ただし、何でも入れていいわけではありません。枯れ葉やコーヒー豆など、乾燥や吸湿によってかたちが変わるものは要注意。後からポコッと取れてしまったり、周辺にひび割れが入ったりする可能性があります。

「これ、入れたら面白そう!」のあと、ちょっと素材との相性チェックもお忘れなく。

スターバックスの床に、マグカップ!?

そんなビールストーンの遊び心を感じられるのが、うめきたのスターバックス。

https://stories.starbucks.co.jp/stories/2025/umekitagreenplacestore-2/ より

店舗で役目を終え、廃棄される予定だったマグカップや皿の破片を、床や一部の壁の仕上げに使用しているそう。「割れてしまったから捨てる」のではなく、新しい空間の一部として生まれ変わらせる。現代のサステナブルにも通じる「もったいない精神」と、ちょっとした遊び心が表現されています。

こうして見ると、ビールストーンに入れるものは、ただの「石選び」ではないのかもしれません。地域の石や、その場所に馴染みのある素材、思い出のあるものを入れてみる。そうすることで、デザインとして面白いだけでなく、その場所にしかないストーリーまで仕上げに残すことができるのです!

「何を入れよう?」と考えるところから、ビールストーンの楽しみは始まっているのかもしれません。

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実際に、つくってみるとこんな感じ

私が担当させていただいたお宅でも、ビールストーンを使ったカウンターを施工しました。まずは骨材を混ぜ込んだビールストーンを流し込み、ヘラで丁寧に形を整えていきます。

そして、表面に石の表情がしっかり現れるよう、材料が固まる前に骨材を一粒一粒追加。

この作業、のんびりしている暇はありません。材料の硬化具合を見ながら、どこに石を入れるか、どんな表情にするかをイメージしながら、頭をフル回転させて進めていきます。

ちなみに今回は、「緑の石を入れたい!」というご要望があり、こちらの市販の石を追加しました。

乾燥した後は、いよいよ研磨。

日を置いて少しずつ表面を削り、中に隠れていた石を露出させていくと、徐々に仕上がりの表情が見えてきます!

「石の角度によって、こんなに長く現れるんだ!」「ここは短く現れてる……」「ん? ここは最初に流し込んだ石か!」「あれ、ここは思ったより石が多めに入ってたんだ!」

入れるときはいろいろ考えていても、正直、どんな表情になるのかは、削ってみないと誰にも分かりません(笑)それが楽しい!

完成してしまえば一枚の天板ですが、その中には「どんな石を、どこに入れるか」という計画と、削って開けてみるまでのお楽しみ、玉手箱のようなワクワクが詰まっています。だからこそ、同じものは二つとない。そんな予測できなさも、ビールストーンの面白さなのかもしれません。

研磨にも時間がかかるため、カウンターの天板などでも完成まで1週間程度必要になる場合があります。また、研磨時には大量の粉塵が発生するため、施工場所や工事のタイミングも事前の計画が大切。こういうところは、現場で施工する素材ならではのポイントですね。

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お手入れって、たいへん?

実際に使うなら気になるのが、日々のお手入れ。

ビールストーンは、適切な保護材を施すことで、水や油の汚れにも強くなります。キッチンや水まわりなど、特に水や汚れが気になる場所には、用途に合わせて皮膜タイプの保護材がおすすめです。皮膜タイプの保護材を施した場合、普段のお手入れは、中性洗剤を水で薄めて、スポンジや布巾で拭き掃除。

熱にも比較的強く、保護材によっては60℃程度まで耐熱性があるそう。とはいえ、熱い鍋やフライパンを直接置くのは避けたほうが良さそうです。

そして、もうひとつ知っておきたいのが、ひび割れない素材『ではない』ということ。モールテックスと同様にひび割れしにくい素材ではありますが、建物の振動や下地、形状などの条件によっては、ひびが入ることもあります。

また、長く使っていると表面の艶が少しずつ落ちてくることも。そんなときは、研磨や保護材の塗り直しなど、メンテナンスを行うことで、長く付き合っていくことができます。

自分だけの仕上げを、楽しむ

ビールストーンは、磨き上げることで大理石のような上質感がありながら、石の選び方や入れ方次第では、ぐっと個性的にも、遊び心のある表情にもできます。

「高級な素材を使いたい」というより、「せっかくつくるなら、自分たちらしいものをつくりたい。」そんな方にこそ、面白い素材かもしれません。

石を選んで、色を選んで、ときにはその場所にしかないものを混ぜ込んで。完成したときには、きっと「ただの天板」「ただの壁」ではなくなるはずです。

リノベーションで素材を選ぶとき、カタログから「正解」を探すのもひとつですが、

「これ、入れてみたら面白いかも?」「これが入ってたら、ちょっと嬉しいかも。」から始めてみるのもいいかもしれませんね。

実物を見てみるのも、きっと楽しい。

「いろんなビールストーンを実際に見てみたい!」という方は、大阪・豊中にある「リーブル大阪ショールーム」に一度足を運んでみても良いかも。モールテックスやビールストーンの実際の施工事例はもちろん、骨材や顔料の組み合わせ、保護材の仕上げも見ることができます。

「この石、好きかも」「こんな色にしたい!」と、実物を見ながら考えられるので、素材選びがもっと楽しくなるかもしれません。

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