長屋をリノベーションして暮らしたい!注意点と施工事例 – リノベーションコラム

長屋の外観

大阪の市街地でよく見かける古い木造の長屋。再生して活用される事例も増えてきました。木製の建具や型ガラス、小さな庭があったり、建物によっては少し洋風にアレンジされていたりと残したいデザインがたくさん。また、昔ながらの小さなコミュニティがあったり、新しく小規模な店舗が入っていたり・・一度は住んでみたいと思う人も多いでしょう。

「親族が所有している長屋をリノベーションして暮らしたい」

「空き家になっている所有長屋をリノベーションして賃貸したい」

「長屋を購入してリノベーションして暮らしたいけど、そもそも可能なの?」

そんな疑問にお答えします!

 

記事の著者

松下文子

Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。

 

建築基準法で定められた「長屋」と一般的に使われる「長屋」

長屋というと隣同士が繋がった古い木造住宅をイメージする人が多いと思います。

建築基準法ではもう少し広義で、「長屋」の定義は「2以上の住戸又は住室を有する建築物で、隣接する住戸又は住室 が、開口部のない壁又は床を共有し、廊下、階段等の共用部分を有しない形式の住宅」とされています。少し意外に思えるかもしれませんが、築年数の浅い連棟住宅で鉄筋コンクリート造等の建物も法律上は長屋の一種になるのです。法令上は、共同住宅になるのか長屋になるのかによって建物にかかる制限が変わってきます。

このコラムでは、よく一般的にイメージされるような古い木造の長屋を「長屋」と呼ぶことにしたいと思います。

長屋の歴史と分布

さて、長屋ってどんなところにあるんでしょう。実は大阪府は全国で一番長屋が多いんです。

その歴史は「大大阪」時代と呼ばれた、大正時代の後半から昭和の始めに遡ります。当時、大阪は急速な都市化に伴い、多くの住宅が建てられました。その多くが労働者向けの貸家で、その9割が長屋だったと言われています。当時、入居者を呼び込むためにデザインが工夫されたことも、今でも長屋に魅力を感じる人が多い理由になっているようです。その後、戦争で大阪市内中心部は焼け野原になりましたが、一部の戦災を逃れた地域では今も多く古い木造長屋が残されています。

私達がよく大阪R不動産で取扱っているのは、中央区谷町周辺、阿倍野区、大阪市北区、その他にも住吉区や東大阪など広い地域にわたります。古くからの住宅街で利便性の高い場所に多いのが特徴です。

大阪市立大学の「大阪長屋の概要」に詳しく紹介されています。)

 

長屋の売買は難しい?

住宅ローンが借りられない

大阪の市街地でよく見かける長屋。長らく人が住んだ様子がないのを見て不思議に思ったことがある人もいると思います。また、物件情報が出ていて比較的安くてもなかなか買い手がつかない様子を見たことがあるかもしれません。

趣のある長屋は魅力的。ただし、「長屋を購入して住みたい!」と思っても、実はハードルが高いことが多くあります。というのも、住宅ローンが、長屋の購入には使えないことがほとんど。築年数が古いことに加えて、長屋は隣家と柱や界壁を共有している性質上単体での建て替えが難しく、金融機関には再建築不可と判断されて建物の担保評価がでない場合が多いためです。また、敷地境界が不確定だったり、権利関係がややこしい場合もあります。

ごく稀に、長屋の一番端で接道していて単体で建て替えが可能な場合や、繋がっていた住戸がすべて解体されて一戸建てのようになった建物など、条件が整った場合には住宅ローンの利用が切る場合もあります。また、銀行によっては長屋でも融資がつけられるところがありますので、ローンについては個別にご相談ください。

キャッシュで購入して工事費をローンで借りる

それでも長屋を購入してリノベーションしたい、という場合は建物自体はキャッシュで購入し、工事費を無担保のリフォームローンを活用して借りるなど、別の方法があります。無理のない資金計画を立ててから物件探しをしていきましょう。

賃貸で借りる

購入が難しい場合は、賃貸で借りることももちろん可能です。古い木造長屋を持つオーナーさんから、依頼を受けて賃貸住戸や店舗付住宅にリノベーションすることが増えてきました。また、大阪R不動産で賃貸の仲介をさせていただくことも多くあります。

賃貸で検討の方は >> 大阪R不動産をご覧ください!

長屋のリノベーションをご検討のオーナーは >> 不動産コンサルティングのページをご覧ください!

長屋の和室

長屋のリノベーション工事のコツ

残せるものを探すところから始める。

外から見ると素敵な長屋なのに、中に入るとピカピカに工事されていて、キレイだけどなんだかなぁ、と思うことがあります。

まずは、残してつかいたい建物が持つ魅力的なパーツを探してみましょう。木製の建具、今では生産されていない型ガラス、立派な木を使った梁、時間を経て色が変わりツヤツヤしている柱・・など、残したいものはたくさんあるはずです。和室から洋室にしたい場所でも、和室の要素を完全に取り除いたり隠したりする必要はありません。欄間や床の間を残したり、聚楽の壁は塗装したり・・など、アイデア次第で活かせるものもたくさんあります。

また、吹き抜けや通り土間、小さな庭など長屋の特徴的な空間も現代の住まいにはない空間の使い方です。ぜひ、その良さを活かしながら新旧をうまく掛け合わせながら工事後の空間をイメージしてみてください。

▶︎関連コラムはこちら:新築みたいを目指さない

ぜひ残したい長屋のパーツ

長屋の耐震補強工事

築年数の古い木造長屋の場合、耐震補強はリノベーション工事と合わせて検討がオススメ。ただし、一棟をまるごとリノベーションする際を除いて、建物全体の補強は出来ないので室内側から可能な範囲で耐震補強をしていくことになります。通常の耐震補強工事の他に、耐震シェルターを設置するといった方法もあります。どれも個別に建物に合わせて計画していくので、まずはご相談ください。

長屋の断熱工事

また、長屋は断熱材等が施工されていないことがほとんど。「冬場は底冷えして外より寒い!」と、入居者の方から聞くことも多くあります。全面的に断熱工事をすることも可能ですが、費用がかかることとサッシの入替え等によって長屋の残したいデザインがなくなってしまうことも。そんな場合は床材の更新の際に床下に断熱材を施工する、天井裏に断熱材を施工するなど、長屋の雰囲気を壊さず、かつ費用も抑えながら断熱性能を少しでも上げるという選択をする場合もあります。希望内容と予算、建物の状況と合わせて総合的に判断しましょう。

忘れちゃいけない防音工事

隣にどんな人が住んでいるかがわかるコミュニティがあるのは長屋の良いところですが、隣同士の音が聞こえやすく、ストレスを感じたりトラブルのもとになることもあります。建て方によっては、屋根裏の部分には隣家との間の壁がないことも。リノベーション工事をする際に、防音対策も忘れずに検討しましょう。

長屋の工事費を予測するのは難しい

リノベーションを検討する際、建物の状態とリノベーションの希望内容を鑑みて、ある程度の予算を想定しながら計画は進めますが、戸建て住宅、特に長屋のような築年数が建った建物にかかる工事費を正確に想定するのは至難の業です。修繕が必要な傷みが着工してから見つかったり、ひとつひとつ建てられ方やインフラの状態が異なるため、費用の想定がつかないことが多いためです。工事費は余裕を持った金額で想定しておくこと、また、着工前の段階で予算を全て使い切った工事内容にせずに、着工後の想定外の出来事のためにある程度の余裕を見ておくことが必要です。

長屋のリノベーション事例

・阿倍野区北畠の2築年不詳の2軒長屋。欄間、床の間等に竣工当時の設(しつらえ)が良い状態で残る一方で、玄関やキッチン周りは簡易なリフォームが施され、味わいのある趣を妨げていました。流し台を造作キッチンに入れ替えるなど、リフォーム部分は竣工当時の趣になじむようなデザインに変更。それ以外は既存を積極的に再利用したメリハリのあるリノベーション事例です。

リノベーションした長屋の外観

▶事例の詳細はこちら

・東大阪市永和に建つ、平屋建ての6軒長屋。木造長屋や文化住宅など古い町並みの残る閑静な住環境をできるだけ損なわないように、建物の古さを”味”として残しつつ、建材や設備は現代の暮らしに合わせてリノベーション。リノベーション後はマンション暮らしではできない庭・土間・縁側のある暮らしに惹かれた20代-30代の新たな層の住民が”長屋暮らし”をされています。

リノベ長屋

▶︎事例の詳細はこちら

 

築年不詳の連棟長屋の1住戸が切り離されて独立し、増築が繰り返され、戸建て住宅のような状態で購入されたNさん。解体してみると現れた、丸太梁とトラス梁をあえて見せ、ストックの辿った時間をデザインに取り込みました。

 

長屋のリノベーション事例

▶事例の詳細はこちら

 

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マンションや築の浅い戸建てとはまた少し違った注意点がある長屋のリノベーション。それでも、時を経た建物でしか出せない味わいや、コミュニティの中で過ごす暮らし方はとても魅力的!

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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長

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