「リノベーション」と「リフォーム」って何が違うの?とよく聞かれますが、どのような違いがあるのでしょうか。本記事では、リノベーションとリフォームの違いや考え方、歴史、特徴を解説しています。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
リノベーションとリフォームに違いはある?
リフォームとリノベーションの違いをまとめたページをよく見ます。古くなった設備や内装を元通りに更新することをリフォーム、間取りの大幅な変更や全面的な内装更新をして建物そのものの価値をアップすることをリノベーションという、といった解釈が一般的でいろんな会社がそれぞれ定義をしていますが、リノベーションとリフォームに明確な定義や違いはなく、あまりその違いを突き詰めることに意味はありません。
私たちは「リノベーション」という言葉をもう少し広義に捉えたいと思っています。建物の内装や設備、間取りをガラッと入れ替えるのももちろんリノベーションです。大規模な工事だけではなくて、必要最低限の一部の修繕をおこなったり、原状回復をするだけでもじゅうぶんに魅力をアップして快適に使えるようになるのであれば、それもリノベーションだと思います。
建物に限定しなくても、見方を変えて空間の使い方が変わった時や、何かがきっかけで人との関わり方や考え方が変わった時にも「リノベーション」という言葉を使うことも増えてきました。定義するなら、既存のものに手を加えて(時には見方を変えて)そのあり方を変えること、といった感じでしょうか。
なので、言葉の定義や規模や手順にこだわらず、リノベーションをした後に得られる時間や暮らしを考えてベストな方法を考えることが重要だと考えています。
リノベーションの歴史
ここで、リノベーションの始まりについてちょっと振り返ってみたいと思います。
海外では古い建物を修繕して使う文化が昔からありましたが、日本でリノベーションの歴史が始まったのは今から25年ほど前だと言われています。
戦後、住宅需要の増加によってとにかく多くの建物を建てることが重視されました。努力のかいあって住宅ストック数は1968年の時点で既に世帯数を上回ったのですが、新築に偏った住宅供給はその後もずっと続いてきました。その後、1980年代に高度経済成長が終わり新築戸数が少し減少した頃から、リフォーム市場が盛んになります。ただ、あくまでもその時点では古くなった内装や設備の修繕や原状回復を目的としたものが中心でした。
リノベーションの流れが少しずつ始まるのは、1990年代に入ってから。東京や関西で少しずつDIYでリノベーションをした店舗が見られるようになり始めました。そして、1998年にアートアンドクラフトがリリースした「クラフトアパートメントvol.1北区同心町」は日本で最初のリノベーション住宅だと言われています。まだ郊外の新築住宅への需要が多く中古住宅の評価が低かったときに「中古住宅を買って好きなように手を入れる」という考え方は画期的だったのです。
それから20年余り。東京でのブルースタジオのリノベーション事業開始を皮切りに、多くの事業者がリノベーション事業に参入。さらにリノベーションによるまちづくりや団地再生、シェアハウス、コワーキング、DIYブーム、宿泊施設のリノベーションブームなど様々な動きが怒涛の勢いで始まったのです。
今では、個人が住まいの購入を検討する時にごく自然に「中古ストックを購入してリノベーションしたい」という選択肢が出てくるまでの広がりを見せています。
*LIFULL HOME’S総研 STOCK&RENOVATION2014 を一部参考にさせていただきました。この辺りの経緯が詳しくまとめられているのでご興味ある方はぜひ読んでみてください!
*また、アートアンドクラフトでは2018年に「リノベーションに20年とこれからの都市とか建築とか」という展覧会を実施しました。その時のブックレットにリノベーションの20年の歩みを示した年表を掲載しているのでよければ手に取ってみてください。
リノベーションの特徴
リノベーションでできることできないこと
リノベーションでは実現できないこともあります。例えば、マンションの一戸をリノベーションしたい場合、建物の躯体や玄関ドアや窓、バルコニーなどは”共用部”にあたるため、区分所有者が勝手に改変することはできません。水廻り設備を接続する配管も今の状態に合わせなければいけないので、間取り変更にも一定の制限が出てきます。
戸建住宅にもできないことはあります。建物を建築した場合、完了検査を受けて検査済証を取得することが義務付けられています。今でこそほぼ全ての建物が検査済証を取得していますが、2000年ごろまでは半数以上の建物で取得がされていない状況でした。検査済証のない建物はそのままでは建築確認申請を出すことができないので、主要構造部の過半の修繕もしくは模様替えにあたる工事、一定の場合を除いた増築などはできません。また、もちろん建築基準法など各種法令に反することはできないのでその辺りのチェックも重要です。
それらを除いた間取りの変更や設備の更新などは、割と自由な工事が可能です。けれどもちろん、工事範囲が大きくなればなるほど費用はアップします。新築と違って既存の建物を触るリノベーション、計画内容によって新築より高くなることも。あまり無理に大規模な工事を検討するよりは、既存のストックに合わせた、無理のない計画をする方が良いでしょう。
リノベーションの費用
規模によって大きく違うので一概には言えませんが、間取り変更や設備の更新を含む大規模なリノベーションをする場合は複数の工事が関わるために費用は高くなりがちです。
▶︎リノベーションの費用についてはこちらのコラムをご覧ください。
リノベーションのメリット
中古物件を購入してリノベーションすることの最大のメリットは「選択肢が自分で増やせる」ことだと思います。それぞれみんな違う暮らしや家族構成、好みを持っている私たち。自分に合わせて住まいやオフィスを作るのが本当は自然なのではないでしょうか。リノベーションの場合、デザインや間取りも自分の暮らしに合わせて決められるし、新築物件より中古物件の方が選択肢は多くなります。工事をどのくらいするか、費用をどのくらいかけるかもご自身である程度のコントロールが可能です。それぞれ、思い思いのリノベーションをされた多様な施工事例を紹介しています。自分だったらどんな暮らしをする?と、ぜひ想像してみてください。
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大阪R不動産では、リノベーションの素材となる物件紹介もしています。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長