最近の新築分譲マンションでは床暖房が標準設置されていることがほとんどになりました。リノベーションの素材として、新築当時から床暖房の設置されているマンションを取り扱うことも多くなってきました。そもそも、リノベーションで床暖房って採用できる?また、最初から床暖房が設置されている場合はそのままつかえるの?床材の変更は可能?など、よくいただく質問についてまとめました。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
温水式と電気式
床暖房には大きく分けて、温水式と電気式の2種類があります。
それぞれの特徴は以下の通り
温水式
・床下に温水パイプを配置し、温水を循環させて床を暖める方式。
・リビングダイニングなど広い面積で使用したい場合に向いている
・温度のムラが少ない
・部屋全体が暖まり、暖かさが持続する
・ランニングコストは比較的安い
・給湯設備と配管が必要なため、初期費用は高い傾向がある
電気式
・床下に電熱線の入ったパネルを組み込んで床を暖める方式。
・キッチンや脱衣所のみなど、部分的な設置に向いている。
・温度のムラが起こりやすい
・低温やけどに注意が必要
・ランニングコストは比較的高め
・パネルが薄く、設置工事が比較的容易。初期費用は安い傾向がある
一戸建ての場合は、基本的にはどちらも設置が可能です。マンションの場合は、電気容量が足りるかどうか(電気式を採用したいとき)、床暖房対応の給湯器を設置できるか(温水式を採用したいとき)、また、管理規約で定められた床の遮音性能を守れるかの3点をまずは確認する必要があります。
リノベーションの場合、上述の通り、ガス式は大規模な工事になるため、電気式の方が採用しやすいと言えます。ただし、広い範囲にはあまり向かないので、設置範囲とコストの両面からの検討が必要です。
床暖房対応の床材が必須
床暖房を採用する際にはもう一点、大きな注意事項があります。それは床暖房専用の床材を使う必要があると言うこと。床材に直接熱が伝わるので、通常の床材だと反りや突き上げ、割れなどにつながるためです。最近は床材の種類も増え、希望のデザインに合わせて選ぶことができるようになってきました。フローリングを合わせたい場合、複合フローリングはもちろん、無垢フローリングもたくさん種類があります。ただし、どれも値段は少しお高め。床暖房自体と合わせて、床材もコストアップを覚悟した方が良いでしょう。そのほかに、ビニルタイルやカーペットも床暖房対応のものがあります。また、磁器タイルやコルクタイルは熱が伝わりやすく熱膨張率が低い特徴があり、希望のデザインを実現しながら床暖房と合わせて採用しやすい素材です。
すでに設置されている床暖房はそのまま使える?
最近増えてきたのはこの相談。購入した中古住宅にすでに床暖房が設置されているがそのまま使って床材の張り替えがしたい、と言うご要望です。結論から言うと、床暖房をそのまま使って床材を張り替えるのは難しいと思った方が良いでしょう。新築当時から床暖房が入っている場合、そのほとんどが温水式ですが、温水式の床暖房は設置の際に、上部の床材としっかり接着剤で貼り付けられていることがほとんどです。そのため、床材を撤去する際に床暖房自体も破損してしまいます。
床暖房をリノベーション後も使いたい場合、以下の2通りの方法があります。まずは、既存の利用を諦めて、一度撤去し、新しく床暖房を入れること。当初から床暖房が入っていれば新しく入れることは可能ではありますが、撤去費、設置費含めてかなりの費用がかかります。
もうひとつは、既存の床材の上に新しい床材を上貼りすること。注意したいのは、床暖房対応の床材であっても上貼りで使える素材の種類がとても少ないこと。希望のデザインのものが見つからずに床暖房の使用を諦める場合も。また、上に貼って床材の厚みが出るので、熱の伝わり方は従前より劣ります。
その他の暖房機器、断熱工事も併せて検討を
メリットも大きいですが、建物によっては設置が難しかったり、工事費用が高額になる、デザインが選べないなど大きなデメリットがあることも。エアコンやファンヒーター、ホットカーペットなどのその他の暖房機器も合わせて検討するのがおすすめです。同じ費用をかけるのであれば、部屋全体の断熱工事をした方が良い場合もあるかもしれません。針葉樹の無垢フローリングやコルクタイル、カーペット暖かみのある床材を使用するだけでも寒さの感じ方がちがってくる場合もあります。全体のリノベーション計画の中で予算と暮らし方と合わせて、検討していきましょう。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長