リノリウムって聞くと、どんなところで使われているのをイメージしますか?バレエスタジオの素材というイメージを持っている方が多いかもしれません。最近だと、天板がリノリウム仕上げになっているイスや机なども見るようになってきました。リノベーションの現場でも、採用したいという声がだんだんと増えてきています。リノリウムってどんな素材?その、メリットやデメリット、採用の際に気をつけることをまとめました。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
リノリウムとは
リノリウムの歴史と特徴
塩ビタイルに見た目が似ていますが、実は天然素材からできているリノリウム。主原料は亜麻仁オイルで、石灰岩や木粉、松脂を混ぜ合わせ、天然色素で色をつけてからジュート(黄麻)を裏打ち材として成形しています。
リノリウムの歴史は長く、1860年代にイギリスで初めて作られました。日本でも1900年代の初頭には使用が始まったとされていて、当時は軍艦などに使用されたそうです。その後、病院や公共施設、商業施設などでも広く使われていました。内装メーカーとして馴染み深い「東リ」も、設立当時は「東洋リノリユーム」という社名でリノリウムの製造をしていました。戦後になって安価な塩ビタイルが市場に出回るにつれ、製造に手間がかかり施工が難しいリノリウムはだんだんと姿を消し、現在は日本国内では生産されていません。
一方で、欧米ではリノリウムのサステナブルな生産サイクルが評価され、長く使用され続けています。日本でも、環境問題や脱プラスチックの機運の高まりにより、再度注目され始めているリノリウム。環境にやさしいだけでなく、さまざまなメリットがあります。
リノリウムのメリット
大きなメリットのひとつは、その強さとメンテナンス性のよさ。水に強く、汚れや傷がつきにくい。また、静電気が起こりにくく埃が溜まりにくい。亜麻仁オイルには自然の抗菌性があり、抗菌・抗ウイルス性・脱臭効果があります。そのほか、耐火性にも優れています。
そして、よく見ると自然素材ならではの風合いやムラがあり、表情に奥行きがあります。適度な柔らかさで多少傷がついても暮らしに馴染んでいく良さが感じられます。多様な色があり、空間のイメージによってセレクトできるのも魅力です。
↑リノリウムのカラーバリエーションの一部、タジマルーフィングのホームページより。詳細はこちら▷
リノリウムで気をつけること
一方で、気をつけないといけないこともいくつか。まずは、アルカリ性に弱いこと。住宅の洗剤の多くはアルカリ性なので、要注意です。また、人によっては亜麻仁オイルの匂いが施工してすぐは気になる方もいるようです。
また、単体では遮音性能は無いので、マンションの場合は管理規約の確認と、下地の検討が必要です。
その他、国内生産がされていないので、在庫が十分にあるかも確認が必要です。場合によっては希望範囲を施工するだけの量が確保できないこともあります。
シートとタイル、施工方法
リノリウムは大きなシート状のものと、タイル状に小さくカットされたものがあります。
シート状のものはシームレスに床がつながるのが魅力。小さい範囲への施工は難しく、ロスも多くなってしまうため、広い範囲で同じ床材を使いたいときに向いています。床面に接着剤を塗布したあと、リノリウムシートを貼り付け、上から専用のローラーで圧着していきます。ロール状で納品されるので、巻き癖を取るために一度広げて伸ばす必要があったり、気温が低い冬場は室温を上げて柔らかくする必要があるなど、施工には少し時間と手間がかかります。一方、タイル状のものはシートと比較すると施工がしやすく、小さい範囲にも貼ることができます。
リノリウムの価格
リノリウムの価格について、ビニル素材に比べると素材自体は少し高め。また、先述したように少し施工が特殊なので、施工費、工期も少し余裕を見る必要があります。予算を検討しながら貼り付け範囲を検討しましょう!
リノリウムを床材に採用したリノベーション事例
・阪神間に佇むビンテージマンションの一室。リビングとキッチンの一部にリノリウムシートを採用しました。床面はグレーですっきりとした印象に。壁に木の表情を入れて、全体の雰囲気を整えています。竣工して10年ほど経った時に再度ご相談をいただき、ビニルタイルで施工した部分が傷んでしまったためにリノリウムに張り替えてほしいというご要望をいただき、リノリウムの長く使える魅力を再確認した事例でもあります。
・部屋と同じくらいの広さのルーフバルコニーがある一室をリノベーションした事例。床はグレーと、ダークグレーのリノリウムタイルを張り分けて施工しました。部屋の真ん中にキッチンがあり、どこにいてもルーフバルコニーの自然を感じられる心地の良い一室です。
・「フローリングは空間の印象が決まりすぎる」と、床材はグレーのリノリウムシートを採用した事例。全体はグレーや白で整え、天井の躯体あらわしや露出配管などで、粗さを混ぜ込みました。
・ライトグレーのリノリウムシートを施工した事例。勾配天井を現した天井高の高い空間構成が魅力的です。壁天井はローラー漆喰仕上げで漆喰にも鉱物顔料でほんの少しグレーを入れています。
最近また人気が出てきたリノリウム。使ってみたい!みてみたい!と思った方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長