新居として中古マンションや中古戸建て、新築戸建ても検討したというOさん。型にはまった住宅になかなか購入の決心がつかなかったところにタイミングよく祖父が住んでいた長屋が空き家になり、引き継ぐことに。せっかくなら雰囲気を一新したいとリノベーションを決意しました。
SNSや雑誌、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』などでイメージを培い、『古民家×ミッドセンチュリー』というテーマに決定。長屋特有の“味のある影”のようなものはありつつ、光と風を横に通すために一階は大きな一部屋をとし、自転車がおける広い土間は必須!これらを携えて設計がスタートしました。
リビング・ダイニング・キッチンをそれぞれ区切らず、大きな一つの空間に。低かった天井を取り躯体現しにしたことで解放感UP。テレビ台やデスク、レコードのターンテーブル置き場にもなる壁面棚はお二人のコレクションが並びます。
カウンターキッチンと悩みに悩んだものの動線を優先してアイランドキッチンに。木造の「抜けない柱」をかわしつつ、流し背面に冷蔵庫、冷蔵庫横にパントリー、コンロの向かいには壁付けベンチを設置してくつろぎ空間に。
ステンレス、モルタル、ラワンの素材を使用した造作キッチン。ずっと憧れていたスプリングホース水栓は住まいのシンボル的存在だそう。「キッチン前のベンチは休日の朝、コーヒーを飲みながら庭の日の光を浴びられて、すごくお気に入りです。(Oさん)」
モルタルもしたい!タイルも捨てがたい!と言う悩みから生まれた組み合わせデザイン。白いタイルが爽やか。基礎化粧品やオイルは飾り棚に見せながら収納。
「宿泊先で撮影した扉が忘れられず…(Oさん)」写真を参考にオリジナルで制作した扉。ガラスはモールガラスを選定。
自転車が置ける広い土間。階段は蹴込板を抜き視線を遮らず広がりを確保。
暗くなりがちな階段踊場をフリースペースとして開放的に。手すりは木柱とアイアンバー。
階段踊場のフリースペース。カウンターを設置してデスクワークや勉強机として使用可能に。奥のW.I.クロゼットはご要望のアーチ枠の入口に。
当初予算を抑える予定だった2階は、やはり納得がいくまでやっておこうと、勾配天井にして小屋組みを一部現しに。床材はビニルタイルを採用してコストを抑えつつ、お手入れにも配慮。
「今まで見えていなかった大きな梁が見えてすごくかっこよくなりました。スクリーンとしても使うことができるようになって、寝室が寝ころびながら見られる映画館になり映画鑑賞ライフが捗っています。(Oさん)」
深めのグリーンが印象的な1階トイレ。ディスプレイとの相性もばっちり。「どこかにカラーの壁を作りたくて、トイレだと雰囲気が変わり楽しめていいなと。(Oさん)」
2階のトイレは打ち合わせの終盤にOさんのひらめきでオレンジ色。これをきっかけにオレンジ色の小物が増えてきたとか。
扉の隙間から覗く、原色の魅力。「目が覚める!」「ええやん!」とお二人の会話が盛り上がります。
入居者の声
初めての戸建て暮らしということもあり、大胆に空間を使えるということに喜びを感じました。レコードプレーヤーをリビングの一部になったことでちゃんと音楽を聴く時間ができたり、それに伴ってテレビを見る時間がいい意味で減り、雑誌を読む時間が増えたりと二人で会話して過ごす時間が増えました。打ち合わせはずっと楽しかったです。自分たちがずっと好きでいられて後世にも遺せるような、家の構造や家具やこだわったポイントを隅々まで好きだからこそ、意味があるからこそ人に説明できる住まいにしていきたいです。(Oさん)
OUTLINE
物件名/0邸
所在地/堺市堺区
構 造/木造
築年月/不詳
竣工月/2024年2月
施工面積/92.47㎡
-
*工事費:1880万円(税込)
-
写真:衣笠名津美
担当者より
対面キッチンのご希望から、L字型とアイランド型と大変悩まれたOさん。合わせてガス衣類乾燥機設置のご要望もあり、キッチンとラバトリーの平面計画には時間を掛けて進めました。設計当初のご要望・方針は明確でしたが、具体的に何が出来るのかを図面で確認して頂く作業は設計の奥深いところで、より悩ませてしまったかもしれませんが真摯にご検討頂き感謝しています。初めての長屋・一軒家暮らしということもあり、A&Cが考える選択肢をご説明し、不安を解消して頂いたのも喜びの一つです。と硬めの話ですが、打合せは終始笑い声が絶えず、「今、笑かしに来てる?」「微笑まし過ぎるんですけど!」と毎回思ってました。(一森)
STAFF
アーキテクト:一森典子
コンサルタント:合尾麻理
リノベーション・物件購入の疑問や要望、資金計画など何でもお気軽にご相談ください。
リノベーションの相談をする >施工事例が詰まった事例集や最新のイベント情報を掲載したチラシなど、役立つ資料をお送りいたします。
資料請求をする(無料) >その他の事例