共同住宅である、マンション。隣と上下に部屋がある形状から、生活音の問題は常につきまといます。リノベーションの際には音に関する規定がある、と聞いたことがある方も多いと思います。マンションリノベーションで求められる遮音性能について、まとめました。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
音の問題は難しい
遮音性能の話に入る前に。共同住宅での音に関わる問題はとても難しいことを覚えておきましょう。音の種類やマンションの形状、構造によって伝わり方はさまざま。更に、暮らしている人の生活リズムや、それぞれの気になる音、建物外からの音など…複雑に絡み合うためです。リノベーションの際に「こうすれば解決!」といった方法は存在しません。また、楽器を演奏される場合など、完全な防音室を作りたい場合は専門業者への相談がおすすめです。
管理規約を確認しよう
では、リノベーション工事の際に音について気をつけるのはどのようなことでしょう。
まずは、管理規約を確認するところから。ほとんどのマンションでは、管理規約で、フローリングの遮音性能について定めています。「床材にフローリングを施工する際はL45以上の性能のものを使用してください」という規定が最もよく見られます。マンションによっては制限がより厳しく、「フローリングは禁止。カーペットのみ可」や、「床の仕様の変更は禁止」といった規定がある場合もありますのでよく確認しましょう。管理規約のほか、不動産売買の際に取得する「管理に係る重要事項調査報告書」や、「工事届」に記載がある場合もあるので、管理会社に合わせて確認します。

L値とは?
L値は、床に物を落とした時や、足音などがどれくらい伝わるかという床衝撃音レベルを表す数値で、L-40からL-80まであります。数字が小さいほど、遮音性能が高いことを示しています。また、L値は軽量床衝撃音を示すLL値(椅子を引く音や、ものを落とす高い音)、重量衝撃音を示すLH値(足音や飛び跳ねるドスンという音)に分けられます。
| 軽量床衝撃音(LL) | 重量床衝撃音(LH) | |
| L-40 | ほとんど聞こえない | かすかに聞こえるが遠くから聞こえる感じ |
| L-45 | 小さく聞こえる | 聞こえるが、意識することはあまりない |
| L-50 | 聞こえる | 小さく聞こえる |
| L-55 | 発生音が気になる | よく聞こえる |
遮音等級は推定値でしかない
L値は日本工業規格(JIS)に基づいて実験室で測定したデータです。現場の状況によって音の伝わり方は様々なので、遮音性能を保証するものではありません。また、スラブ厚は150mmのコンクリートでの実験をしているので、古いマンションなどでスラブ厚が薄い場合、もしくは不明の場合は基準を満たすことができない場合もあります。
新表示ΔL(デルタエル)等級
実は2008年に表示制度が見直され、ΔL等級が使用されるようになりました。従来のL等級は一定の状況での空間への遮音性能を現したものだったのに対し、ΔL等級では床材自体の性能を表すようになり、より基準が明確化されました。ただし、ほとんどの管理規約では、旧基準のL等級の表示のままの場合が多いので気をつける必要があります。
ΔL等級にも、軽量衝撃音のΔLLと重量衝撃音のΔLHがあります。それぞれ、ΔLL1~5、ΔLH1~5までの等級があり、L等級と逆で数字が大きいほうが遮音性能が高くなっています。また、カテゴリーIとカテゴリーIIに分かれていて、カテゴリーIは主に直貼りの素材、カテゴリーIIは二重床などに使用されます。
ΔL等級とL等級は試験方法が異なるので厳密には置き換えできませんが、ΔLL(I)−4等級がほぼ、L45等級と同等程度という参考資料が日本建築総合試験書から出されています。
マンションリノベーションで使えるフローリング
では、最も一般的な「床材にフローリングを施工する際はL45以上の性能のものを使用してください」という規定がある場合、どんな素材が採用できるのでしょうか。
アートアンドクラフトでは、よく直貼り遮音フローリングと乾式二重床を採用しています。乾式二重床の場合は、無垢フローリングのほか、タイルやビニル素材、カーペットなど自由に素材が選べます。ただし、スラブから7cm程度床高が上がるので、天井が低い場合や段差を極力少なくしたい場合などは注意が必要です。

↑toolboxの遮音フローリング。木の表情が魅力。L-45の遮音性能の試験結果あり
(画像はtoolboxのHPhttps://www.r-toolbox.jpより)

↑乾式二重床。(画像は万協フロアーのHPhttps://www.bankyofloor.comより)
個別にご相談ください
どんな素材が採用できるかは、管理規約のほか、管理組合との協議によって決まります。工事予定の物件ごとに個別に確認する必要があります。リノベーションをご検討の際は個別にご相談ください。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長





