中古物件を購入する際の住宅ローン。気に入った物件があると、まずは事前審査をして資金計画を整えてから売買契約へと手続きが進みます。最近はインターネットで簡単に事前審査ができて早ければ即日結果が出る、というような金融機関も増えています。しかし、この簡易な審査が要注意。どこまで審査をしているか、確認する必要があります。
事前審査と本審査
一般的に、住宅ローンには事前審査と本審査という、2段階の融資の審査があります。事前審査は売買契約の前に行う、少し簡易な審査。提出書類も、収入証明と身分証明書、物件の謄本で足りることがほとんどです。本審査は売買契約の後に行う審査で、事前審査よりも必要書類や確認事項が多くなります。
事前審査はあくまでも簡易なものなので、売買契約の際には「万が一、本審査で住宅ローンの融資が通らなかったときは契約を白紙解除できます」といういわゆる「住宅ローン特約」をつけて契約をすることがほとんどです。本審査が無事に通れば、基本的にその後、融資が取り消されることはないので、手続きの準備が整い次第、金銭消費貸借契約をして融資の実行がされ、不動産が無事に買主に引き渡されます。
「住宅ローン特約があれば、本審査で融資ができないと結果が出ても白紙解除できるから別にいいんじゃない」と思うかもしれませんが、そういうわけにはいきません。売買契約は基本的には物件を引き渡しまで取引しましょうという契約ごと。売主・買主・不動産業者、銀行の担当者、司法書士、マンションの場合は管理会社など、たくさんの人を巻き込んで手続きが進みます。また、売主は契約解除になればまた新しい買主を探さなければならず、売却のスケジュールが大幅にズレることにつながります。買主自身も、引っ越すつもりで進めている準備を全てストップしてまたいちから住まいさがしをしなければなりません。
一度不動産の売買契約をしてから解約するというのは、時間も手間も、精神的にもとても大変なことなのです。
住宅ローンのふたつの審査
人に対する審査
住宅ローンには大きく分けて2つの審査があるとご存知でしたか。1つ目は「人」に対する審査。こちらはイメージがしやすいかと思います。人に対する審査では、主に以下のような内容が確認されます。
・職業(勤務先・会社規模・事業内容・収入・勤続年数など)
・個人信用情報(他に借り入れがあるか。過去に借入金の延滞履歴がないか)
・健康状態(団体信用生命保険に加入できるか)
事前審査の時には確認されませんが本審査で引っかかりやすい項目としては以下のようなものがあるので、不動産の営業担当がローンのお手伝いをする際は、以下のような項目をあらかじめ確認して金融機関に伝え、事前審査に盛り込んでもらうようにします。
・大きな病歴はあるか?
・治療中の持病はあるか?
・直近で転職履歴はあるか?
・(女性の場合)産休育休中または予定はあるか?
不動産に対する審査
二つ目は購入予定の不動産に関する審査。住宅ローンを借りる場合、金融機関(または保証会社)は対象となる不動産に抵当権を設定します。抵当権を設定することで、万が一住宅ローンの返済が滞って不動産が競売にかけられた場合、抵当権を設定している債権者(金融機関または保証会社)が優先してお金を返してもらえるようになります。
当然、金融機関としては3000万円の残債があるのに競売にかけたら1000万円にしかならなかった、などと言うことを避けるために、不動産はどれくらいの価値があるのかという「担保評価」を行います。担保評価は不動産の流通価格より低く出るのが一般的。築年数が経てば経つほど担保評価は低くなり、希望の金額が借りられない場合が増えていきます。例えば文化財に指定されるような素晴らしい建物で、高額でも購入したい人がいるような建物であっても、担保評価ではほぼ価値がないとされることさえあるのです。
また、以下のような不動産も住宅ローンが借りられないことが多いので要注意です。
・建ぺい率・容積率が現行基準よりオーバーしている戸建て住宅(既存不適格含む)
・テラスハウス・長屋などの連棟住宅
・接道していない再建築不可物件
・越境のある不動産
・その他、建築基準法等の法令に適合しない住宅
ネットの簡易な住宅ローン審査は注意が必要
住宅ローンは、「人」と「不動産」の2つの審査し、金融機関で総合的に判断をされて融資の可否と融資金額が決定します。しかし、不動産に対する審査は金融機関にとっても時間と手間のかかる作業。まだ融資を受けると決まっていない事前審査の段階では手間の削減のため、収入や個人信用情報の審査だけを行い、不動産の審査を行わない金融機関が増えてきています。
そういった場合、築10年を超えるような物件や、物件を購入してリノベーション工事をしたい場合などは、借入したい金額と金融機関の担保評価に差が出ることが多く、いざ本審査で事前審査で承認が降りた金額が借りられないといったことが起こってしまうのです。特に中古の戸建て住宅の場合は物件の資料を細かくみないとわからない内容が多いため、注意が必要です。
また、購入する不動産が決まっていない段階で簡単診断をして借入可能額を確認しても、実際に購入する物件でどの程度融資が受けられるかはまた別の話になると思っていた方が良いでしょう。あくまでも似た不動産を選んだ時の目安くらいに捉えておくのが良いでしょう。
プロに相談しながら進めよう
金融機関によって、積極的に住宅ローンの融資をしたい人・不動産はそれぞれです。ネット銀行や都市銀行のネット窓口は、事前の審査を簡略化することで金利を下げて、築浅物件に効率的に融資を行うのが得意です。一方で、築年数が経った物件でも、購入する人の審査や不動産の担保評価を丁寧に行い、事前審査の段階から確度の高い審査を行ってくれる金融機関もあります。
不動産取引の営業担当では、経験則からそれぞれのケースで住宅ローンのどのような点に気をつけるべきか、どんな金融機関が向いているかを紹介することができます。また、金融機関にある窓口でも相談は可能です。事前審査はどの程度の内容を審査するのか、本申込でしか審査されない項目はどんなものがあるかを確認しておきましょう。
住宅ローンのこともプロに相談しながら進めるのが安心です。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長