従前は鉄筋コンクリート造4階建て、1階に2区画の店舗、2〜4階はワンフロア1区画の賃貸オフィスの築55年(2022年現在)の複合用途ビル。オーナーより相談を受けた時点の空室率は80%で、なんば・大国町の中間に位置する好立地にもかかわらず、メンテナンス不足による築年数相応の古さ、エレベーターが無い、セキュリティ面への不安など、現在のニーズからは周回遅れの人気のないビルとなっていました。
長期間の空室に加え建物寿命への不安もあり当初は建替え検討も視野にありましたが、東西建物と界壁を共有する構造の建物であったことや敷地境界の不明瞭な状況もあり新築建替えは断念しリノベーションによる再生活用の選択へ。
改修後のファサード、印象を変える一体的なテント庇や共用ゴミ置き場を新設
コロナ禍を経てリモートでの働き方が推進され定着しつつある昨今。小規模事業者からニーズがあった好立地オフィスの需要は下降傾向となっていて、今後ますます厳しい状況になることが予想されます。
そのような背景からユーザー層を変化させ、低迷傾向の賃貸オフィスから競争力のある仕事場と住まいが合体した賃貸住宅に再生することをコンセプトとして計画を進めていきました。
2、3階を「暮らしの中で働く住まい」(共同住宅) 、4階は「寝泊まりできる仕事場」(事務所)とし建築基準法上の建築確認申請の手続きが不要な範囲かつ住宅用地として、固定資産税等の軽減措置を受けることも視野に用途変更をしています 。
『近郊エリアで賃貸オフィスと住宅の両方を別々に借りている』、『賃貸住宅での在宅ワークに不便さを感じていた』そのようなユーザーに訴求する商品として、1フロア1区画(約64m²の広さ)の専有部内は「仕事場」と「住まい」を明確にゾーン分けをしたパブリックとプライベートが両立できる空間として設計されています。また来客者が気兼ねなく利用できるよう両ゾーンからアクセスが容易な位置にトイレを配置する工夫も。
エントランス扉はオートロックを導入し防犯性向上を図った
1階エントランスには各室専用のポストと宅配BOXを新設
部分補修の壁、新タイルと旧タイルを丁寧になじませている
レトロフォントで統一したサイン計画
屋上は休憩スペースや物干しスペースとして活用
気分の切り替えを促す仕掛けとして「仕事場」と「住まい」の空間全体の色にコントラストを
デザイン面では、気分の切り替えを促す仕掛けとして「仕事場」と「住まい」の空間全体の色にコントラストをつけています。「仕事場」はストックそのものの素材感を積極的に活かしコンクリート躯体をメインに床、壁、天井をグレーで統一して無骨さを感じる空間に。一方「住まい」はホワイトで統一。空間を広く見せる効果や入居者の趣味趣向にフィットする空間編集や模様替えがしやすい無地でプレーンな器をイメージしました 。
「仕事場」はストックそのものの素材感を積極的に活かしコンクリート躯体をメインに床、壁、天井をグレーで統一して無骨さを感じる空間に
「住まい」はホワイトで統一、空間を広く見せる効果や入居者の趣味趣向にフィットする空間編集や模様替えがしやすい無地でプレーンな器をイメージ
各階に洗面台と洗濯パンを新設
2、3階はユニットバス、4階はシャワールームを新設
両ゾーンからアクセスが容易な位置にトイレを配置
既製品の電設資材を活用したサイン
従前の賃貸オフィスに備わっていた逆富士型蛍光灯をピックアップ、清掃して再利用
OUTLINE
施設名 / なんばポプラビル
所在地 / 大阪市浪速区
構 造 / RC造地上4階建+塔屋
築 年 / 1967年
リノベーション / 2022年
改修前用途 / 店舗、事務所
改修後用途 / 店舗、共同住宅、事務所
*大阪R不動産で入居者募集をしました 。
STAFF
コンサルティング / 枇杷健一
設計監理 / 枇杷健一
リーシング / 山田輝
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