リノベーション工事とアスベスト┃施主も理解しておくべき知識です – リノベーションコラム

今回はちょっと難しい話。よくニュースなどで耳にする「アスベスト」。日常生活の中では、なんだか遠い話に思えるかもしれませんが、実は身近にあります。ここでは、リノベーション工事をするときのアスベストに関して知っておくべき内容についてまとめました。

 

アスベストの基礎知識

アスベストは「石綿」と呼ばれるとても細い繊維状の天然鉱物の総称です。加工しやすいこと、他の材料と馴染みやすいこと、摩擦、酸やアルカリに強いこと、耐火性能があること、そして安価であることなどから、「奇跡の鉱物」と呼ばれ、戦後、建築材料や工業製品に幅広く使われました。

しかし、繊維を吸引することで肺がんや中皮腫を発症することがわかり始め、段階的に規制され、現在では使用、そしてアスベストを使用した製品の製造が全面禁止されています。

 

アスベストって、住まいに使われていて大丈夫なの!?

アスベストはその危険性に応じてレベル1〜3に分類されます。

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・レベル1:発じん性が著しく高い:最も飛散性が高い吹き付け材など

・レベル2:発じん性が高い:次に飛散性が高い含有保温材、断熱材、耐火被覆材など

・レベル3:発じん性が比較的低い:それ以外の含有する成形板の仕上げ材料など

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レベル1、2のアスベスト建材は、存在するだけで危険なのですぐに封じ込める・撤去するひつようがあります。ただし、一般的な住宅で使われていることはほとんどありません。

一方、レベル3のアスベスト建材は、住宅を含む現存する多くの建物に存在している可能性があります。住宅で特に含まれている可能性が高いのは、戸建て住宅の屋根材、外壁など。そして、建物の種類を問わず、石膏ボードやビニル床タイル、クロス、クロスの接着剤などの内装材。レベル3の建材は「非飛散性」と言われ、建材の中に固定されているので日常生活ではそれほど問題になりませんが、リノベーションをする際は解体工事に伴って飛散するので注意が必要です。

 

使われている可能性があるのはいつの建物?

アスベスト含有建材は1975年から段階的に使用が禁止され2006年9月1日に全面的に使用・製造が禁止されました。

そのため、2006年9月1日以降に新築工事に着手した建物に関しては基本的に使用されていないと判断して良いとされています。逆にいうと、2006年8月31日以前に新築工事に着手した建物については、建物の種類を問わず含有建材が使われている可能性があると考えて適切な手順を踏んでの工事が必要ということになります。

 

リノベーション工事の際にアスベスト調査が必要です。

大気汚染防止法等の改正によって、2021年4月からレベル3に該当する建材についても法律の規制対象となり、新たに作業基準が設けられました。また、2022年4月からは、解体工事を行う前にアスベスト含有建材の調査を実施し、その結果の都道府県等への報告が義務化されました。

調査・解体工事の流れ

一定規模以上のリノベーション工事を請負う場合、工事の元請業者(アートアンドクラフトで工事をする場合はアートアンドクラフト)は、すべてのアスベスト含有建材の有無に関する調査を実施しなければなりません。また、その結果を労働基準監督署と都道府県へ報告する義務があります。

アートアンドクラフトでは法令遵守のため、以下のような流れを基本として調査と解体工事を進めています。

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①書面調査:竣工時期や使用建材、竣工図書等をもとに、アスベストの含有建材がある可能性を調べます。

②現地調査:目視により調査対象となる建材の位置や使用範囲を確認します。

③試料採取・分析:検体を採取して分析機関にてアスベストが含まれているか分析します。(結果が出るまで最短で3週間ほどかかります)

④報告書提出・発注者への説明:労働監督署と都道府県へ結果の電子報告を実施。また、発注者へ結果の報告をさせていただきます。

電子報告は事前調査でアスベストの含有建材がないと判断された場合、分析でアスベストの含有が検出されなかった場合でも必要です。

⑤工事着工:アスベスト含有建材が見つかった場合は、適切な手続きと対策をしながら該当部分の解体を行い、その後通常通りの解体工事を行います。アスベスト含有建材が見つからなかった場合は通常通り工事を進めます。

*一連の調査、電子報告は建築物石綿含有建材調査者が行う必要があります。(アートアンドクラフトには2022年5月現在、6名の有資格者がいます)

*レベル1、2のアスベストが存在する可能性がある場合は別の流れで進みます。

*アスベストを含む可能性がある建材の使用範囲が少ない場合や、分析調査を行うよりも「アスベストが含まれている」とみなして工事をすすめる方が費用が抑えら得る場合や、工事がスムーズに進む場合はみなし解体をおすすめすることがあります。

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発注者(施主)にも義務があります。

アスベストの調査、報告の実施は工事業者だけではなく工事の発注者(施主)にも次の義務を負うことが定められています。

・ 当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力すること。

・ 当該調査に要する費用を適正に負担すること。

知らない間に法律に違反していた!なんてことにならないように。アートアンドクラフトでは、丁寧な説明を行なっています。

 

余裕を持ったスケジュールと予算計画を

スケジュールと予算計画も、アスベストが含まれるかどうかによって流動的になるので注意が必要です。

・スケジュール:物件を購入してリノベーションする場合、引渡しが終わってから検体採取をすることになるので、物件の引渡しから工事の着工まで最短でも1ヶ月が必要となります。また、アスベストが含まれる建材が見つかった場合、通常より工期が伸びる場合があります。

・費用:調査、電子報告に関する費用がかかる他、分析をする検体の数によって必要な費用は異なります。また、アスベスト含有建材が検出されたときには、その部分は適切な解体、処分を行わなければなりませんので通常より解体費が高くなります。

 

全体のスケジュールや、費用についても打ち合わせの中で丁寧にお話しさせていただきます。さまざまな法律が関係するリノベーション工事。リノベーションのプロとして、法令遵守しながら設計と工事を進めています。ご不安なことはお気軽にご相談ください!

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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長

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