利便性を優先し、大阪市内で物件を探し始めたIさんご夫婦。しかし、実際に購入されたのは北摂に位置する大阪万博(70’)に合わせて建設されたプール付きヴィンテージマンションでした。「この物件に出会ってしまったから」と、ひとめぼれから始まったリノベーションによる住まいづくり。直線と柔らかい曲線の組み合わせ、滑らかな木の表情、ぬくもりを感じる漆喰の白い壁は、Iさん夫婦が好きな建築を参考に取り入れた。それぞれの要素が調和した空間には長年過ごしてきた家具がしっくり馴染み、まるでおじいちゃん家に遊びにきたような懐かしく居心地の良い住まいになりました。
Iさん夫婦が好きな建築家アントニン・レーモンドの富士見の家を参考に、パーケットフローリングの床や木質の壁、障子をデザインに取り込んだ。
木パネルの壁は既存再利用。物件内覧時に気に入ったポイントのひとつ。友人の写真家の作品を飾っている棚は骨董市で見つけたもので、元々は保育園の靴置きだったそう。
玄関から廊下。天井には共用廊下の色に合わせた青いクロスを。白い壁は既存タイルを剥がして漆喰で仕上げ凹凸のある表情に。
モールテックス(左官材)の通り土間。縁側で顔を洗うような心地よさをと、洗面はこの位置に移設した。
キッチンの腰壁には他の壁でつかわれていた木パネルを移設した。
オープンな造作キッチン。コンロは業務用の置き型コンロを採用。背面は既成品ラックを活用した収納に。カーテンのむこうが洗濯機置き場になっている。
リビングには中古で手に入れた天童木工のソファ。音楽好きのIさん夫婦が長年集めてきたレコードやCDがずらりと並ぶ。
新設の壁。鴨居があることで扉をつけずとも空間を仕切っている。
障子窓の向こうは寝室。
ラワン合板と有孔ボード仕上げの収納スペース。上部は建築家アルヴァ・アアルトの要素を取り入れて曲線に加工した。壁にはスタイリッシュな固定電話。
左)刃捨てと書いたプレートは元々外国人スタッフ滞在用に建設された名残。Iさんが記念に飾っている。 右)ベージュ色で挿し口が丸いデザインのコンセントを採用。
敷地内のプールは大人も利用できる。ビート板を買ったというIさん。夏を楽しむ準備は万端なよう。
入居者の声
ふたりとも古い家が好きなんです。新築でなくリノベーションは当然の選択でした。とはいえ、ひとめぼれから自身も驚く勢いで購入に踏み切ったので気構えて資料を集めることもなく、元々持っていた好きなイメージを担当者に伝えていきました。おしゃれな暮らしを目指したわけでなく、住み手である自分たちが落ち着ける空間にしたかったんです。吉村順三やレーモンド、アアルトといった好きな建築家の話で盛り上がったときにはこのチームで行ける!と思いましたね(笑)。間取りはすぐに決まり、平面では分からない金物や壁の肌触りなど細かなところを繰り返し打合せしてイメージに近づけていきました。A&Cの設計は普通のなかにも遊び心があると思っていて、障子をどこかに入れたいけれど全体のまとまりを壊してしまうかもと恐るおそる伝えた要望にも、いいですね!と一緒に楽しみながらカタチにしてくれたのは嬉しかったです。
OUTLINE
物件名/I邸
所在地/吹田市
構 造/RC造
築年月/1969年
竣工月/2018年8月
施工面積/52.47㎡
A&Cで物件探し
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写真:平野 愛
担当者より
既存収納の中に残る、70年の大阪万博当時の外国人ゲストが書いたであろう落書きを「可愛い!」と喜ばれたIさん。何気ないと見落とされがちなものでも宝物に思える、そう思えるツボが同じで毎回の打ち合わせが楽しく仕方ありませんでした。プランに制限をかけていた既存の在来タイル貼りの3点ユニットバス*は、洗面を風と光が抜ける土間先に移動させることで解決。結果、お二人が大切にされていた暮らしのシーンを作ることができました。ストックの良さをとことん活かし、既存再利用のもの達と同じように歳を取っていける愛着のあるものに囲まれた暮らし。Iさんに住んでもらえて、家も喜んでいると思います。(芝山)
*3点ユニットバス:風呂、洗面台、トイレが一室におさめられている。
STAFF
設計・監理:芝山明日香
コーディネーター:合尾麻理
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