
中古物件を購入し、リノベーションして暮らすことが一般的になって、10年以上。生活スタイルが変わり、過去にリノベーションした物件を売却したいという方から声をかけていただく機会がふえてきました。また、弊社で運営している大阪R不動産(▶大阪R不動産はこちら)をみて、「古いけれど魅力的な物件を売りたいんです」と、ご相談をいただくこともあります。
皆さん悩んでいるのは、不動産業者に相談したものの、ただ古い建物として査定されてしまう、ということ。中には、古い戸建ての売却相談をしたら、「建物の価値はゼロです」と言われてしまったという人もいます。
不動産を購入する時と同じように不動産の売却も、そう何回も経験するものではありません。時間がかかっても高く売却したい。できるだけ早く売却したい。住み替え先が決まっているのでスケジュールを重視したい。建物の傷みを了承して購入して欲しい。愛着のある家を大切に住み継いでくれる人に売却したい。など、売却するときの優先事項もさまざま。
じゃあ、どこに頼んで、どうやって進める?このコラムでは、不動産の基本的な売却知識から、リノベーション済み/リノベーション向けの物件の売却の際に気をつけることまでまとめました。
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
目次
不動産の売却依頼、まずはどこに相談する?
不動産業者にも得意不得意があります。
代表的なもので言うと賃貸と売買。賃貸物件の取扱がメインの業者に売却を頼むと担当者が慣れておらず、査定が適切でないことや、内見につながってもうまく営業してくれないことも。また、購入希望の相談を受けている顧客も少ないことが考えられるので、個別紹介の機会も少なくなります。もちろん、担当者によっては売買も得意にしている人もいるので、その会社や担当者が何を得意にしているか聞いてみましょう。
売買をメインにする不動産業者にも、どんな物件を得意にしているかは違ってきます。その特徴を理解して、どこから声を掛けるか、考えてみましょう。
地元業者に相談するメリット・デメリット
不動産を売却する際、その物件があるエリアを得意とする不動産業者に頼むのがまずはセオリーです。不動産はエリアによって相場も違えば、顧客の求める条件も違うもの。どんなに能力のある担当者でも、エリアが変わると急に相場がわからなくなることも。また、ご自身が物件を購入する立場になって考えてみてください。まずは希望エリアの近くの業者に相談をしてみると思います。
小さな会社でも、長く地元に密着して不動産を取り扱っていて、信頼できる業者はたくさんあります。身近にそんな不動産業者がないか探してみましょう。
逆に、ずっと同じエリアで仕事をしているからこそ、他のエリアから買主を見つけるのが苦手な場合もあります。「エリアは限定せず、味のある物件を探したい!」というような探し方をしている人にはなかなか、地元に強い業者ではアプローチが難しい場合が多くあります。
大手の業者に依頼するメリット・デメリット
住友不動産販売や三井のリハウス、東急リバブルなどの大手の会社は、集客力とネットワークが魅力。他府県からの住み替えが多いエリアや、築浅、駅の近くなど一般的に不動産としての条件が良い物件を売却する場合は相談してみるのも良いと思います。
また、売却活動中も、無料でハウスクリーニングをしてくれたり、CGで写真に家具をレイアウトしてくれたり⋯売却後も、アフターサービスがついて、設備の不具合に売り主にかわって対応してくれるなどのサービスがついているところもあります。
一方で、不動産の知識は豊富なものの、担当者がリノベーションの知識があまりないことも多く、リノベーション工事をした分を査定に反映するのが苦手なケースもあります。
リノベーション会社に相談するメリット・デメリット
こだわってリノベーションした物件を売却しようと思ったら、不動産業者に「変な間取りだと売れません」「水廻りのリフォーム分をちょっと上乗せできるくらいですかね~」と言われたという声をよく聞きます。
そんな時はぜひ私たちのように、リノベーションと不動産をどちらも行っている会社に相談して欲しいです。自分たちで工事を行なっているから、そしてリノベーション済み物件の取引の経験が豊富なので、実施されたリノベーション工事にどのくらいの価値があるのか、その物件を気に入ってくれそうな人がどのくらいいるか、また、買主が自分で工事をすることを考えたらどのくらいの費用がかかるのかを考慮に入れて売却の査定を出すことができます。
築古の戸建てやマンションなど一般的な不動産指標ではなかなか評価されない物件も、私たちの顧客にとっては魅力的な物件となります。築年数や駅からの距離だけで価値がないとされてしまってはもったいない!古いけど眺望がいい、年数を経て味が出て素敵な建物になっている、そんな建物の売却をお考えの方は、その良さをわかってくれる会社を探しましょう。
急いでいる場合や、傷みのひどい物件は買取も視野に
建物が傷んでいて個人に売るのは難しい場合や不安な場合、事情がありとにかく売却を急いでいる場合は、不動産業者に買い取ってもらうことも可能です。スピーディーに査定をして現金化できることが最大のメリット。売却したあとに設備保証などを負わなくていいのも大きな利点です。ただし、買取査定の金額は低めです。必ず売却したい期日が決まっている場合などは、一度査定を出しておいて、まずは一般顧客をめがけて売却活動をし、なかなか商談に繋がらない場合に業者買取を検討するのも一つの選択肢です。
査定の金額に惑わされてはいけない
不動産の売却の際には、まずはこの物件はいくらで売れるかという査定を出します。査定には、周辺の過去の成約事例や直近の不動産相場のほか、内部の状態やその物件の希少性などを考慮します。当然、不動産業者は不動産の売却を頼んで欲しいのでできるだけ高い金額で出すことが多くなります。
ただし、注意したいのは、査定金額=売却金額ではないと言うこと。到底売れそうもない金額で提示して売却を依頼してもらってから、あとで大幅な値下げを提案するというような営業をしている不動産業者も多いのが現実です。当然、高い値段だと売却までに時間がかかる傾向があります。始めに高く出しすぎて結局売れるのに時間がかかってしまったということもよくあるのでとにかく高く売り出せばいい、というものではありません。
一番大切なのは、売却したい期日までの進め方
物件を売却するうえで、最初の査定金額より重要なのは、売却したい期日までの全体の進め方。「どのくらいの期間での売却を目指すか?」「その期日は必達なのか、目標なのか」「なかなか問い合わせがない場合、次はどんな手を打つのか」「値下げはいつ、いくらを予定する?」「利用する広告媒体は?」など、担当者とよく相談して作戦を立てましょう。全体を見越していないと、その場その場の問い合わせの数に振り回されてしまう結果になります。
媒介契約はどれを選ぶべき?
不動産の売却の依頼先が決まると、売却の媒介契約をします。媒介契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があり、それぞれ指定流通機構への登録期日や売主への報告頻度などが決められています。
専任媒介契約のメリット・デメリット
売却する不動産と相性が良く、かつ信頼できる担当者が見つかれば専任媒介契約がおすすめ。窓口がひとつになるので販売状況などの情報管理が容易で、販売条件の改定などもひとりの担当者とよく相談して決められます。また、指定流通機構への登録義務もあるので、他の不動産業者へもそこを通して情報共有ができます。専任媒介契約にすると集客の間口が狭いのでは、と心配する必要はありません。ただ、まれに囲い込みといって、依頼業者が自分自身で買主を見つけたいがために、別の業者からの問い合わせを断ってしまう場合があります。担当者が信頼できるかどうかはよく判断しましょう。
一般媒介契約のメリット・デメリット
一般媒介契約の場合は、売主は複数の不動産業者に売却を依頼することができます。例えば、地元業者とリノベーション業者のどちらにも広告を頑張ってほしい場合や、お世話になっている業者が複数ある場合など。いろんな立場からの意見をもらえるので、幅広い広報ができる一方で、担当者同士の意見が異なると、どう進めていいか悩むことも。物件の販売状況や条件改訂など、依頼する会社全てと打ち合わせる必要があるので、あまりたくさんの会社にお願いするのは得策ではありません。同じような営業スタイルの会社にたくさん頼むよりは、特徴の異なる会社へお願いする場合に使うのが良いでしょう。指定流通機構への登録義務はないので、登録して欲しい場合は明確に依頼しましょう。
専属専任媒介契約のメリット・デメリット
媒介契約の中で一番売主の縛りが厳しいのが専属専任媒介契約です。売主が自身で購入者を見つけた場合にも専属専任媒介契約を結んでいる不動産業者を通しての契約が必要という決まりになっています。実務の場面で専属専任媒介契約をすることはあまりありません。
不動産を売却しやすいタイミングとは?
不動産の動きが活発な時期を狙おう
一般的に、1年で一番不動産の売買が活発なのは、1月から3月と言われています。生活スタイルが変わって引っ越す人や、子どもの進学のタイミング等に合わせて住まいを検討する人が多くなるためだと言われています。その次は、9月〜11月の秋頃が、売買物件の数が多くなる傾向があります。7~8月の暑い時期や、年末のバタバタする時期は売却物件も、物件探しをしている人も少ない傾向にあります。といっても、取引がないわけではないので絶対ではありませんが、できるだけ流通が活発な時期を狙って売却活動をするのがおすすめです。
不動産売却の流れと費用
不動産の売却の流れ
不動産の売却の流れは、次のように進みます。個人間売買の場合は、おおよそ売買契約から決済まで、3ヶ月程度が目安です。
- 【売却相談】
相談先を決めて、まずは売却の相談。購入したときの資料や、新築時/リフォーム実施時の図面、固定資産税の評価証明書、マンションの場合は管理規約等があればよりスムーズです。また、住宅ローンの借入残債がある場合は、抹消までのスケジュールを銀行に確認します。物件の登記識別情報通知(昔の権利証)が手元にあるかも確認しておきましょう。
- 【査定】
現地確認の上、いくらで売却するかの査定金額を出してもらいます。最初の売出し金額だけではなく、いつまでに、いくらで売りたいのか、減額をしていくのか、値引きの可能性があるのかどうかの相談もしておきましょう。
- 【媒介契約の締結】
依頼先と媒介契約の種類をきめたら、媒介契約書を締結します。不動産仲介は成約報酬が通常なので、特別な調査などが必要でない場合はここまででは特に費用はかかりません。
- 【販売活動】
ポータルサイトやホームページ、チラシ等で販売活動をしてもらいます。検討客が内見に来るので、空き家の場合も、居住中の場合もできるだけ部屋をきれいにしましょう。
- 【購入申込】
物件を気に入った方から、購入申込があれば、資金計画などを確認し、その人に売却するかどうかをきめましょう。価格交渉がある場合は、応じるかどうかを検討し、契約時期・引渡し時期も相談の上、決定します。
- 【売買契約】
契約が決まれば販売活動はストップし、契約準備に入ります。売買契約の時点で仲介手数料の半金を支払うのが一般的です。
- 【決済・引渡し】
契約後は売り主買主双方、決済にむけて準備を進めます。住宅ローンの手続きに時間がかかることがあるので、早めに準備を進めましょう。無事に手続きが全て終わり、売却代金が振り込まれたらその日のうちに所有権の移転手続きを実施します。
- 【売却後】
売却後は、確定申告が必要な場合があるのであらかじめ税務署等に相談をしておきましょう。また、引渡し後すぐに設備に不具合等があった場合、売主が修繕をする必要があることもあります。契約内容をよく理解しておきましょう。
不動産の売却にかかる費用
不動産の売却時にかかる主な費用は、以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 登記費用
- 住宅ローン関連費用(繰り上げ返済手数料など)
- 印紙税(売買契約書に貼付)
また、売却によって利益が出た場合は税金がかかる場合があります。
こだわったリノベーション物件を高く売りたい!
入居時にこだわってリノベーションをした住まい。「内装の良さを気に入ってくれる方に売却したい。」「リノベーションにかけた費用分も多少は査定に見てほしい。」そんなお話をよくいただきます。
結論から言うと、大きな不動産相場の変動がない限り、売却時にリノベーションにかけた費用を全て取り戻すのは難しいと思っていただいたほうがいいでしょう。また、一般的な不動産業者では、リノベーション物件の査定は嫌がられることも多くあります。間取りが変わっていたり、使っている素材の特徴がわからなかったりすると売却に苦労するんじゃないかな、と担当者が思ってしまうためです。
それでも、その間取りや内装を気に入ってくれる人を見つけられれば、相場よりある程度は高く売却は可能です。他の不動産を買ってイチからリノベーションをするよりも、そのままや、少し手を加えるだけで住めるリノベーション物件は、物件を買ってリノベーションをしたいと考えている方に取っては魅力的な選択肢になりうるからです。
リノベーション時に無垢フローリングを使っていれば、傷が気になっても少し削ってメンテナンスすることができますし、塗装仕上げは塗り直すことで再度きれいになります。そういった知識まで担当者が持っていれば、メンテナンスの提案もスムーズです。
築年数は古いけれど、味のある物件を住み継いでほしい!
日本では不動産の価値には築年数がとても重視されます。そのため、どれだけ素敵な歴史ある建物でも、築年数が古いと、それだけで価値がないとみなされてしまうこともあります。
一方、築年数は古くても、味のある戸建て住宅やヴィンテージマンションなどは、リノベーションの素材として人気があり、そんな物件を長らく探している人もいます。大切なのは、どうやってその人達に情報を届けるかというところです。
不動産の売却は アートアンドクラフト/大阪R不動産にご相談ください。
アートアンドクラフト/大阪R不動産では、不動産の売却のお手伝いをしています。私たちが得意とするのは、築年数をとわずリノベーション済の不動産、リノベーションの素材となりそうな魅力のある不動産、大阪R不動産に掲載されているような個性的な不動産などです。戸建て、マンション、長屋、ビルなど建物の種類を問わず、ご相談を受け付けております。不誠実に高く査定を出すことはありません。できるだけ適正な金額をご覧いただきながら、一緒に売却へのステップを検討させていただきます。
弊社でリノベーションをしていただいた方の住まいはもちろん、他社で過去2リノベーションされた住まいの売却も数多くサポートしてきました。まずはお気軽に、ご相談ください。
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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長