キッチンリノベーションの基本
多くの人にとって、住まいの中で重要な要素の一つであるキッチン。どんなキッチンにするかによって、空間の雰囲気も大きく変わるため、「こんなキッチンにしたい!」とあこがれがある人も多いと思います。料理をする頻度や調理器具の量、家族構成など様々なことが関わるキッチンのリノベーション。どんな使い方をするかによって選択肢はたくさんあります。好みのデザインで、かつ使いやすく、リノベーションで実現可能なキッチンとは?
自分らしいキッチンづくりのヒントをまとめました!
記事の著者
松下文子
Arts &Crafts 取締役副社長
大阪府生まれ。大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業。不動産デベロッパーを経て、2014年にアートアンドクラフトに入社。不動産の知識を活かし、自分らしい住まいづくりのコーディネートをしています。二級建築士/宅地建物取引士。
キッチンのリノベーション、まずはここをチェック!
キッチンは配置もデザインも、大きさもいろいろ。デザインも重要ですが、日々の生活の中で誰がどのくらい使用するか、キッチン周りに置きたいものの量を把握することも長く使いやすいキッチンの計画にはとても大切。まずは下のようなところを考えてみましょう。
暮らしについて
・料理をする頻度は?
・料理をするのは誰?
・複数人でキッチンに立つことはある?
・テレビや家族の様子を見ながら料理をする?
・買い置きする派?その都度購入する派?
・食事をする場所と人数、時間帯
・来客は多い?
持ちもの・収納について
・キッチン家電の数と種類
・使用頻度の高い調理器具とその量
・使用頻度の低い調理器具とその量
・食洗機、オーブンは必要?
・収納は見せたいor見せたくない!
リノベーションで気をつけるキッチンの工事の制約
続いて、リノベーションでできないこと、気をつけることも確認しておきましょう。
排水経路
マンションの場合、室内の配管は自由に動かせますが、マンション全体の縦管とそれぞれの配管の接続部の位置は変更することができません。特に排水管は必要な勾配を取りながら、もともとの接続位置まで繋ぐ必要があります。キッチンの場所を大きく移動する際やアイランドキッチンを希望の場合は要注意。排水管を通すために大きく床上げをする必要が出てくる場合もあります。室内にできるだけ段差を作りたくない場合は、排水経路を確認してから移動場所を決定しましょう。
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ダクト経路
もう一つはレンジフードからの排気を通すダクトの経路。こちらも、マンションの場合は外気につながるダクトを通す穴の位置は変更できません。レンジフードからダクトを通す穴までの間に大きな梁がないか、ある場合はどうルートを通していくかの確認が必要です。
内装制限
建築基準法でキッチンは火気使用室と定義され、内装制限が適用されます。指定された範囲の壁や天井を準不燃材料以上の不燃材料で仕上げる必要があり、希望の仕上げができないことがあります。また、大きな間取り変更を伴う戸建て住宅のリノベーションで、もともと和天井の貼られた和室部分にキッチンを移動したい場合、天井全体を張り替える必要が出てくる場合などがあります。自治体によりますが、IHコンロの場合は内装制限を受けず無いこともあります。どの範囲に制限がかかるか、個別に確認が必要です。
キッチンの選び方
キッチンの配置とそれぞれの特徴
さて、次はキッチンの配置と形について。分譲マンションや建売戸建てでは対面式のI型キッチンがほとんどですが、他にもたくさん種類はあります。全体の間取りの中での配置の検討はもちろん、使い方や動線も考えながら検討していきます。
I型キッチン(対面型)の 特徴、メリットとデメリット
まずは一番スタンダードな、I型キッチン。コンロ、調理台、シンクが一直線に並んだキッチンのことをいいます。キッチンに向かうとリビング・ダイニングが見える対面型が最もよく選ばれています。メリットは、リビングダイニングが見えるので家族の様子を見たりテレビを見ながら調理できること。また、手元に立ち上がりをつければキッチンの中が丸見えにならないように調整できること、冷蔵庫や食器棚が背面に置ける事などがあります。デメリットはある程度まとまったスペースが必要であること。もともとの間取りによっては採用が難しい場合もあります。
I型キッチン(壁付型)の 特徴、メリットとデメリット
少し前の団地などでよく採用されていたのがこの形、I型キッチンが壁面についていて、その前に食卓を置く配置が一般的でした。メリットは、調理する際の動線と食卓の周りのスペースを兼ねることができるので省スペースであること。デメリットはキッチンがリビングダイニングから丸見えになること。
実はアートアンドクラフトのリノベーションで意外とよく採用されているのがこの形。壁付けキッチンって考えていなかったという方でも、配管にも無理がなく、省スペースで全体の間取りを考えるとベストな場合もあります。丸見えが気になる場合は前に目隠しの腰壁や造作収納を設置するのも一つのアイデアです。
アイランドキッチンの特徴、メリットとデメリット
「アイランドキッチンに憧れています!」というご要望もよくいただきます。アイランドキッチンは、I型キッチンの左右が通路になっていて、文字通り島のように配置するキッチンのこと。メリットは動線が複数あるので使いやすく、複数人で料理をする家族にもおすすめ。また、キッチンが空間のメインになるので、キッチン中心の住まいづくりをしたい場合にもよく採用されます。デメリットは、キッチンに接する壁がないためマンションの場合配管を通すための段差が必要になることが多いこと。また、キッチンのスペースにある程度の広さが必要です。
L型キッチンの特徴、メリットとデメリット
続いてはL型キッチン。Lの字のように真ん中で折れ曲がったキッチンの配置をいいます。メリットは省スペースで済むこと。間口の狭い戸建てやマンションの場合はL型キッチンが採用されることが多くあります。また、シンクとコンロの位置を近くに配置すれば調理の際に大きく移動する必要がないこともメリットなので、飲食店などでもよく見られる配置です。デメリットはL字の角の部分の収納が使いにくいこと、冷蔵庫や食器棚の配置が難しいこと。そして、既製品でL型のキッチンがあまりないので、システムキッチンを採用したい場合に選択肢が少ないことが挙げられます。
二型キッチンの特徴、メリットとデメリット
二型キッチンはシンクとコンロが横並びではなく、2つに分かれているキッチンのこと。メリットとしては省スペースで設置できること、横移動しなくても後ろを振り返ることでコンロとシンクが使えるため調理の際の動線がスムーズなこと。デメリットとしては、既製品での選択肢が少ないことが挙げられます。
クローズドキッチンの特徴、メリット、デメリット
キッチンがリビングダイニングの一部ではなく個室になった独立型のキッチンをクローズドキッチンと呼びます。メリットは、扉をつけてしまえば外からは見えないこと。来客が多くあまりキッチンを見せたくない場合や、匂いが気になる場合などに採用されます。
それぞれの形を採用した事例は関連コラムをご覧ください。
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システムキッチンと造作キッチン
キッチン設備も選択肢は様々にあります。大きく分けるとシステムキッチンにするか、造作キッチンにするか。その他にもブロックキッチンなどがあります。
システムキッチンは、各メーカーが出している製品で、主要なところだとタカラスタンダード、TOTO、LIXIL、Panasonic,トクラス、クリナップなどがあります。また、その他にも天然木を使った面材が特徴的なウッドワン、オーダーメイドが売りのキッチンハウス、輸入製品やオリジナル製品を取り扱うミラタップ(サンワカンパニー)、海外メーカーだとCUCINAやSieMaticなどの高級キッチンもあります。
直近では、さまざまな建材を取り扱うtoolboxのキッチンも人気。(toolboxのページはこちら)
各社、特徴がそれぞれにあり、値段もラインナップも様々。まずは自身が重視する機能やデザインがどのメーカーの商品で叶えられるか、そして価格がどのくらいかを確認しましょう。
一方、造作キッチンは天板をオーダーし、脚は大工さんが現場で組む、オリジナルのキッチン。オーダーメイドができるので、寸法や形は自由に設定できるのがメリット。自分らしいデザインと使い勝手のキッチンが作れます。ただし、引き出しや扉まで作り込み始めると価格はシステムキッチンより高くなるのでできるだけシンプルに作るのがおすすめ。逆に、キッチンツールや調味料などの収納をとことん考えて作られたシステムキッチンのほうがお好みに合う方はシステムキッチンを選択するのがおすすめです。
ブロックキッチンは、コンロ・流し台・シンクなどがそれぞれ組み立てられた状態で納品され、組み合わせて設置します。シンプルでリーズナブルなのが魅力です。
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キッチン周りの設備
キッチン本体の方針がある程度決まれば、続いては、周辺設備。本体に食洗機やオーブンをビルトインしたい場合は対応機種の確認が必要です。MieleやBOSCH、GAGGENAUなどの海外製の食洗機は日本のキッチンメーカーのシステムキッチンでは対応していない場合も多くあります。そのほか、レンジフードや、水栓、コンロも使い勝手やデザインを考える上で重要な要素です。
見せる収納、隠す収納、パントリー
多くの場合、システムキッチンにはそのデザインに対応したカップボードもセレクトできます。カップボードをセットでいれるのか、家具を活用するのか、造作で収納をつくるのか、、キッチンツールを見せたいか隠したいかによっても選び方が代わってきます。頻繁に使用しないキッチンツールが多い人は、吊り戸棚を活用してもよいでしょう。吊戸棚は圧迫感が出るから避けたい、少しなにか置ける場所はほしい・・という場合は、天井吊りのシンプルなワイヤーラックなども設置できます。食器や家電を見せながら収納したい人はオープンな壁面棚。すべて隠してできるだけキッチンはスッキリさせたい場合、買い置きのストックが多い人などは小さくてもパントリーを作るとぐっと収納量がアップします。
キッチンの照明計画
続いてはキッチンの照明。料理をする際に必要な明るさを確保するのはもちろん、照明の光の色も好みや目的によって異なります。
温かみがあり、リラックスした雰囲気が魅力で室内によく採用されるのは電球色ですが、キッチンの場合は、すべてを電球色にしてしまうと食材の色が見にくい場合も。また、細かい作業もあるキッチンでは、昼白色がおすすめとされています。キッチン全体を昼白色の電球にする場合もありますし、手元灯のみを昼白色に、全体はリビングに合わせて電球色を選択する場合もあります。
こちらも、それぞれの方の使い方やご希望似合わせて選んでいきましょう。
水や汚れに強い内装材
キッチンでは水ハネや油ハネがどうしても避けられません。内装材はデザインはもちろんですが、お手入れのしやすさが重要です。
床材
アートアンドクラフトのリノベーションの際に、床材で最もよく使用するのはビニルタイル。耐久性があり、水や汚れに強く、かつ安価で色やデザインの幅も多いことが魅力です。
その他にも、磁器質タイルやリノリウムなどを使用することもあります。フローリングを使用する場合も多いですが、水に濡れたまま放置すると変色等の原因になるので注意が必要です。
壁材
壁はクロスで仕上げる場合が多いですが、キッチンのコンロまわりや手元の立ち上がりなどは耐水性、耐熱性が求められます。キッチンで使用することを想定して作られたキッチンパネル、水や熱に強い磁器質タイルを使用する場合が比較的多くあります。キッチンパネルのツルッとした感じが苦手…という場合は、艶なしや塗装仕上げのキッチンパネルも商品としてあるので、おすすめです。それ以外にも、キッチンの天板に合わせて壁もステンレスの板を貼って仕上げることもあります。お手入れもしやすく、すっきりとしたデザインが魅力です。その他、マンションで壁付けのキッチンを作る場合は、コンロやシンク前をコンクリートの躯体現しとして素材感を見せるのもおすすめです。
キッチンリノベーションの費用
さて、キッチンのリノベーションについて、検討する項目をたくさん見てきました。次に気になるのは費用。キッチンのリノベーションでは、キッチン本体の価格、周辺機器の価格、給排水設備を整える費用、内装工事、電気工事など多くの項目が関わってきます。特に、キッチン本体と周辺機器の価格は、選ぶものによって大きく代わってくるので、キッチンまわりにどのくらいの予算をかけるのかをよく考えてから検討する必要があります。位置や形状の移動を検討する場合は、費用が大きくなるのでその他の部屋もまとめてリノベーションを検討するのがおすすめです。
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まずは事例をみることから!
キッチンのリノベーションを検討するなら、メーカーのショウルームに行くのもいいですが、まずは事例をたくさんみましょう!
・自分にあう使い勝手は?
・好きなデザインは?
・リビングダイニングなど、家の他の部分とのつながりは?
このあたりを整理しながら事例を見ていくと、自分らしいキッチンにたどり着けると思います。各社の施工事例や、事例見学会などを活用しましょう。
もちろん、自分で全部決める必要はありません。なんとなくのイメージや使い勝手を整理しながら提案してくれるのが設計者と一緒に作るリノベーションの大きなメリット。アートアンドクラフトでは、設計者がとことんヒアリングをして提案をしながらリノベーション設計を進めていきます。
住まい探しからのリノベーション、ご自宅のリノベーション、どちらも対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。