戸建住宅の耐震診断と耐震補強 - リノベーションコラム

中古の戸建て住宅のリノベーションを検討するときに必ず考えておきたいのは、工事に合わせて、耐震化工事をするべきかどうか。耐震診断と耐震補強のフローや注意事項についてまとめました。

リノベーションと同時検討をおすすめする理由

中古物件の購入の際や、大きなリノベーションをする際にその建物の耐震性についても把握しておくと、安心感につながるのはもちろんのこと、費用対効果が期待できます。というのも、耐震化工事単体にかかる費用の内訳を見てみると、解体費に約20%・耐震補強費に約40%・復旧費に約40%程度。つまり、耐震補強の前後の「剥がすこと貼り直すこと」に総額の60%が掛かっているということです。いつ起こるかわからない地震に対する耐震化工事に、大きな費用をかけるのは躊躇する気持ちはとても良くわかります。でも、仕上げ材の更新や間取り変更等を含むリノベーション工事と同時に行えば、間取りの改変や仕上げ材の更新など、「剥がすこと貼り直すこと」は一度で済み、単体の耐震化工事と比較すればコストを抑えることができるわけです。

では、どんなところから考えていくのが良いのか、続けてみていきましょう。

 

まずは建築年をチェック

ご存知の通り、日本は非常に地震が多い国です。1950年に建築基準法が制定されて以降、大きな地震があるたびに耐震基準は見直されてきました。まずはその建物がどの年代に建てられたのかを確認してみましょう。

日本で初めて建物に耐震設計が義務付けられたのは1950年の建築基準法施行のとき。その後、1971年、1981年に大きな改正がありました。特によく知られているのは1981年6月の法改正でしょう。それ以前に建築確認申請を受けた建物を「旧耐震基準」、それ以降の建物が「新耐震基準」と一般的に呼ばれています。その後、いくつかの大きな改正を経て、現在の基準に至っています。また、2001年からは品確法の施行があり、新築する建物に耐震等級の明示が義務付けられました。

耐震性は建築年だけでは決まらない

 ここで、注意しておきたいのは、建物の耐震性は建築年と、そのときの法律だけでは決まらないということ。そもそも、法律で定められている耐震基準はあくまでも、最低限基準です。旧耐震基準の建物でも強固に建てられている場合もあります。一方で新耐震基準の建物でも屋根の重さや、建物の形状、などによっては揺れに弱いところがある可能性があります。中古住宅では、建物の傷み具合も耐震性に影響します。また、特に戸建住宅の場合、建物の完了後の検査の記録がない物件も多く、(検査済証がない建物と呼ばれるもの)当時の法令通り建てられたかわからない場合も多くあります。年代だけでなく、建物ごとによく確認する必要があります。

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建物調査と木造の建物の3つの耐震診断法

耐震診断の方法としては、(一社)日本建築防災協会が定めている耐震診断法が広く使われています。弊社の設計者も日本建築防災協会の耐震診断資格者講習と耐震改修技術者講習を受けています。建物の構造によって耐震診断の方法は異なりますが、ここでは、一般的な木造住宅の耐震診断について記載していきます。(木造住宅でも一部対象外の建物もあります。)

まずは建物調査から

耐震診断と耐震補強工事の全体の流れは、建物調査⇒耐震診断⇒耐震補強設計と進みます。リノベーションと合わせて場合はリノベーションの設計と同時進行で進めます。

まずは対象となる建物を調査していきます。そして、建物の床面積や屋根の重さなどから、その建物がどれだけの強さを必要とするか(=必要耐力)を確認します。実はここが一番大切なところ。そして、それに対して今現在、建物が持っている強さ(=保有耐力)を耐震診断で確認し、総合評価とします。

総合評価は下記のように表します。

総合評価 保有耐力/必要耐力

1.5以上   ・・「倒壊しない」

1.0〜1.5未満 ・・「一応倒壊しない」

0.7〜1.0未満 ・・「倒壊する可能性がある」

0.7未満   ・・「倒壊する可能性が高い」

「誰でもできる我が家の耐震診断」

(一社)日本建築防災協会が定める診断法には大きくわけて一般の人でも取り組める簡易な「誰でもできる我が家の耐震診断」と、建築士が実施する「一般診断法」、「詳細診断法」があります。

1つ目にご紹介するのは、一般の方でも簡単に実施できる「誰でもできる我が家の耐震診断」。耐震診断というと難しそうに感じますが、一般の人から見てもなんとなくここが弱そうだな、なんとなくここが心配だな、と感じるところが、実はプロも見ている重要なポイントなのです。

「誰でもできる我が家の耐震診断」では、建物の建築年や、形、屋根の種類、傷み具合、過去に災害の被害にあったことがあるかなど、が質問項目にあり、チェックをしていくと、どの程度耐震に対して不安があるかということを明らかにすることができます。

▷「誰でもできる我が家の耐震診断」はこちら

一般診断法と精密診断法

続いて、建築士が依頼を受けて行う耐震診断について。一般診断法は破壊を伴わない耐震診断の方法で、目に見えない建物の内部に関しては想定をしながら進めていきます。建物の所有権の移転が済んでいない場合や、リノベーションで解体する範囲が決まっていない場合などに採用します。

精密診断法にはいくつか種類がありますが、共通点は破壊検査を伴うということ。内部まで細かく確認するため一般診断法より正確な耐震診断ができますが、一般診断法と比較すると費用と時間が多くかかります。

耐震補強設計

耐震診断も結果をもとに、耐震補強工事をするかどうかを決定していきます。耐震補強工事には、壁の増設、屋根の軽量化、基礎の補修、金物の設置などの方法があります。

アートアンドクラフトの耐震指針

耐震診断と耐震化工事の基本的な流れはこれまでに書いた通りですが、アートアンドクラフトではこれまでの木造戸建ての改修実績を元に、オリジナルの「耐震指針」をまとめています。現実には建物ごとの状況や、施主のリノベーションへの希望、予算は様々で、すべてがすべて今の法律を満たすような耐震補強工事をするわけではないためです。

大規模なリノベーションを予定していて耐震補強工事の優先度も高く予算も余裕がある場合は「新築基準同等の性能を目指す耐震化」。一方、内装や設備などのリノベーションにも費用をかけたい場合に現実的な費用の中で「部分的な耐震化」を実施する場合もあります。また、建物全体の耐震化が難しい場合など、寝室のみ「耐震シェルター」の設置を選択する場合もあります。

耐震補強だけでなく、間取りや内装や設備の工事にも費用をかけたいのは当然のこと。その耐震化工事が「どこを目指すのか」、そしてそれに必要な時間と予算はどのくらいなのかを理解していただいて、工事全体の方針を決定するために活用しています。

 

お気軽にご相談ください。

アートアンドクラフトでは必要に応じて構造設計の専門家とも連携をとりながら、耐震補強も含めたリノベーションの設計施工をしています。ご自宅のリノベーションを検討しているが耐震性に不安がある、購入予定の物件の耐震化も含めたリノベーション工事の相談がしたいなど、まずはお気軽にご相談ください。

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文:松下文子 Arts &Crafts 取締役副社長

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