給水方式の見直しにより使わなくなった受水槽室を活用したいという声から始まった今回の計画。受水槽室の特徴としては…すごく狭い、そして暗い。物件としては悪条件に思えますが、倉庫としては好条件では!?そこで考え出した企画がハイスペックな進化系トランクルームでした。最低限の水回りがあって作業ができる。大事なものの保管庫にも安心な空調・湿度管理もできる機能性など、一般的なトランクルームとは少し違った、趣味を楽しむオトナのためのトランクルームを作りました。
大阪R不動産で募集したタイトルは「たった3坪の贅沢を」。この小さなスペースが生活をはるかに豊かにするという意味を込めました。募集期間はたった10日間でしたが、複数の問い合わせと3組の申込がありました。世の中にまだまだある技術の進歩により使わなくなってしまった小さなスペース。その活用方法の一つとして提案したい事例です。

受水槽室跡という小さくて暗いニッチな空間。

受水槽撤去後。粗い躯体に木毛セメント板やコンクリートブロックで構成された室内。建物奥側は壁がない状態だった。
BEFORE
給水方式の見直しにより使わなくなった受水槽室を活用したいという声から始まった今回の計画。住居や事務所等の居室とするには、採光・換気面など、居住性のハードルがあった。またどこまでの設備投資をするかの検討の中で、”倉庫”として再生することにしました。

元受水槽室の粗々しい躯体やコンクリートブロックの壁はそのままに、内装に大きく手を加えずに、上部棚と水回りを整えている。

入居したのは趣味のコレクションが多くある男性。自宅には置ききれないフィギュアやポスター、レコードなどを3坪に詰め込んで、愛でている。

受水槽室が1階にあったこともトランクルーム(倉庫)としてはメリットに。床はPタイルを貼って土足・上足どちらも対応できるようになっている。

棚柱と棚受は備品として用意、棚板は入居者が手配。コンクリートの壁面と棚板、そこに陳列される入居者の持ち物。まるで店舗のディスプレイのような雰囲気。

上部棚にはハシゴで移動、限られた平面の中で、天井高を活かして空間を有効活用している。

建築当時は建物入口側のテナント用に設置されていたトイレは、すでに使われていなかったため、トランクルーム側からアクセスできるように変更。

ミニマルな洗面台を用意。水回りがあることで、荷物を入れるだけはなく、作業や一時的な滞在なども可能な進化型のトランクルームとなった。

物の保管場所として安心できる環境になるように、ロスナイ(熱交換形換気機器)を設置して温度と湿度を管理している。

温度・湿度計を設置して現状を把握できるように。保管するものによって温度・湿度を調整できる。

部屋番号は"100号室"とした。

入居者はコレクションの保管のために元々別の倉庫を使っていたが、住居との距離感やサイズ感、使い勝手を考慮して今回の物件への引越しを決意した。
OUTLINE
所在地 / 大阪市浪速区
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写真:坂下 丈太郎
STAFF
コンサルティング / 西面莉沙・山田輝
設計監理 / 西面莉沙
リーシング / 山田輝
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