酒屋からオフィスに｜鈴木油脂工業株式会社

化成品や業務用・住宅用洗剤などを取り扱う化学総合メーカー、鈴木油脂工業株式会社によるサテライトオフィス。
まちの人たちに長く親しまれてきた、印象的な佇まいの旧酒屋を取得し、近接する自社工場と連携した「執務・倉庫・休憩スペース」を備える拠点としてリノベーションしました。

一見オフィスには向かないと思われがちな、ユニークなストックである旧酒屋をどう活かすか──。そこから、このプロジェクトは始まりました。
看板や冷蔵庫など、酒屋時代の面影をあえて残し、“オフィスの個性”として取り入れながら、解体や工事範囲を限定することでコスト削減にもつなげています。

今回のオフィスリノベーションでは、働く環境の向上はもちろん、企業としての課題でもあったリクルート強化も見据えています。

Before

元々は酒屋を営んでいた住居兼店舗の鉄骨造2階建の建物。以前からなじみのあった店舗の移転を機に、建物を取得してサテライトオフィスとして活用することになりました。特徴的な看板やガラスブロック、当時使っていた冷蔵庫など、酒屋としての面影を残しつつリノベーション。間取りの変更は必要最小限にとどめ、主に用途に合わせた内装更新を実施。外壁やエントランス、サイン工事等も含め、企業イメージに合わせた色使いや素材選びで、建物全体を再生しました。

酒屋だった時の特徴的なカーブ状の既存看板を再塗装、白と黒のツートンカラーは偶然にも本社のイメージカラーと同じ。

1F：事務室

事務作業を主としながら、部分的に倉庫として利用する1Fは、間仕切りのない一体的な空間として計画。オフィスの中心に位置する柱は、既存タイルを塗装して再利用したもので、複合機用のコンセントやネットの主装置用のLANを集約しています。

オフィスは全て土足利用を想定してPタイル仕上げ。1階は特に倉庫として利用する際に台車の傷等がつきやすいため、模様があるPタイルを選定して、目立たないようにしています。またかつて酒屋で使用されていた自動ドアは開口幅が狭く、倉庫利用に支障があったため撤去。スチール製の特注建具を新設することで、搬入出の動線の確保とともに、エントランス周りの印象も刷新しました。

約90㎡の1F部分は執務室＋倉庫。外観と同じく白と黒のイメージカラーの内装デザインに

酒類を保管していた冷蔵庫は、ダイノック貼とポリ合板で主力商品を並べるショーケース(白部分)と、書類等事務用品の収納(黒部分)として使っている

黒く塗装された天井に、浮くようなベースライト

天井は一部構造を現し黒塗装とした。ワンルームだが単調にならない執務空間に。執務空間には既存ALC外壁に開口を開けて新しく引き違い窓を設けた。角地の立地を生かして2面から光や風が入るように提案。

ガラスブロックから光が差し込む旧厨房部分に水回りを配置。

業務用冷蔵庫を再利用した倉庫スペース

2F：休憩室・更衣室

近接する工場で働く作業員の休憩室・更衣室として計画。現状工場に併設する更衣室で挙がっていた課題をもとに、湯沸室や洗濯の機能を追加、昼休憩の場所も設えました。1室あたり3〜4名の利用を想定、既存の間取りを活かし、最小限の改修にとどめながらもイメージを一新しています。元々住居兼店舗として1.2Fで切り分けられていた動線は、セキュリティや運営面を考慮し、1Fの事務室を経由し2Fにアクセスするように整理しました。

鉄骨階段は土足利用を想定して仕上撤去の上に縞鋼板を貼っている

近接する工場の休憩室・更衣室として計画。作業着等も洗えるように洗濯機置き場も設えた

2階休憩室の2室は黒とグレーで床を貼り分けて、使い方でイメージを変えている

エントランスはスチールで製作した両開き戸で、荷台で搬入しやすいよう開口幅を確保。玄関タイルは既存のタイルから上貼りしている

ステンレスバイブレーション仕上げのサインをカーブ状の既存看板に取付しデザインのポイントに

工場

サテライトオフィスのリノベーションに併せて、工場の外観も整えています。建物正面の外壁の塗装、テント部分は既存鉄骨を再利用し塗装、テント生地は張り替えるなど、工事範囲を抑えつつも効果的に印象を変えています。また手動で開閉していた重量のある鉄扉は、1人では開閉するのが困難な重さだったため、電動シャッターに変更。使いやすくなったと喜びの声があがっているそうです。