⼤阪市中央区に佇む、⼀際⽬を引く外観のマンション。コーポラティブハウスの先駆けである『都住創』シリーズの⼀室を『購⼊+リノベーション』した N さん家族。夫はイギリス・ロンドン出⾝、妻は⼤阪出⾝・オーストラリアに 6 年在住歴ありと、 夫婦ともに海外居住歴が⻑い。 「広々とした LDK で親族や友⼈・同僚たちが集まってホームパーティーを楽しみたい」 「内と外がバリアフリーに繋がり、気候が良い⽇は裸⾜のままバルコニーへ出て過ごしたい」 といった、N さんの暮らしの価値観に応えてくれる、 ストックの魅⼒を最⼤限に活かしたリノベーション事例。趣味のコレクションや、アートピース、デザイナーズ家具の数々までもが、居⼼良さそうに⾒える。
7M 超のワイドスパン開⼝を取り込んだ、46平⽶(約28 帖)のLDK。天井⾼はできる限り確保した。「安藤忠雄設計のようなコンクリート剥き出しの建築物が好き」だというNさん。コンクリートの梁と柱、オーク無垢材のフレンチヘリンボーン床、造作家具に採⽤したラワン合板、といった素材が持つ表情のコントラストが絶妙。
カウンターテーブルも兼ねる、3.5Mの造作対⾯キッチンを「家の中⼼にあって⼼みたいな存在」だとNさん。料理好きの妻は多くの時間をキッチンで過ごし、夫の1⽇はキッチンで注ぐエスプレッソから始まる。
天板には⼈造研ぎ出し仕上げの『ビールストーン』を採⽤。「イギリスのカフェでは、⼤理⽯のカウンターを よく⾒かけます。⼤理⽯とは異なるけれど、馴染みある表情で興味を持った。他にモルタルやモールテックス仕上げも候補にあったけれど、全体のバランスとしても、結果ビールストーンを採⽤してよかったです(N さん)」
ビルトインオーブン・ワインセラー・冷蔵庫・ルンバといった家電類が収納できる、キッチン背⾯収納。暮らしに合わせたオリジナル造作家具でスッキリと。
⻑年の趣味で集めている本やレコード、プレイヤー、TV をまとめて収納できるよう家具を造作。「“ラワン材”での家具造作は設計者からの提案です。安っぽくならないか?との⼼配もありましたが、サンプルを⾒て、その表情が気に⼊り採⽤を即決!思った以上の仕上がりで、とても気に⼊っています(Nさん)」
「扉を開閉するアイディアも、 設計者が提案してくれました。 普段は扉を閉めることでTV中⼼にならず、家族と過ごす時間を⼤切にできています。⼀⽅で、ホームパーティーの際には、TVがキッチンとダイニングどちらからも⽬に⼊る位置にあるため、皆でスポーツ観戦を楽しむことができます。(Nさん)」
「造作家具のラワン合板の積層された断⾯(⽊⼝)も好き。さまざまな⾊があって表情豊かなんです(Nさん)」
内と外との繋がりを意識して、バルコニーに⾯したダイニングとした。「海外では外でのんびり過ごしたり、⾷事を楽しむのは⽇常。都⼼部では⼩さくても庭やバルコニーがある物件は⼈気です。 ⽇本だとバルコニーは洗濯物を⼲す場所としている⼈が多い印象だけれど、それは勿体無い。これからは、作り付けプランター(新築当時からのオリジナル)に、植栽を施してより⼀層楽しみたい!(Nさん)」
寝室には⼤型クローゼットとstorageを設けた。塗装で仕上げたグリーン⾊のベッドヘッドには、アルネ・ヤコブセンのウォールライトを設置。ココナッツチェア(ジョージ・ネルソン)は前住居からの愛⽤品。
storageはLDK 壁⾯収納の配線処理スペースも兼ねている。
⼦ども部屋は、ベッドだけでなく服もおもちゃも、将来は勉強机も…と独⽴した1室として、広さをしっかり確保。
天井と壁は⽩く塗装し直すことで明るい印象に。 窓際の両サイドにある収納棚は新築時からのオリジナル。棚板材のみ更新した。
「浴室にはグリーン⾊で好みのタイルを使いたい!という要望があったけれど、予算⾯でのハードルが⾼かったし、全体のデザインバランスも考えて⾒送った。結果、タイル仕上げかつ防⽔⾯も安⼼できるメーカー品のハーフユニットで、 気に⼊るデザインのものを採⽤しました。 グリーンのタイルはまたいつか(笑)」
⼿洗い器を別で設けた、タンクレスのウォッシュレット⼀体型トイレ。Pタイルの床に、壁・天井は塗装仕上げ。
洗⾯カウンターの収納部は造作。シンク⼀体型の⼈造⼤理⽯天板に壁付⽔栓はtoolboxの商品を採⽤。
スニーカーや⾃転⾞を数多くお持ちのNさん。10 平⽶(約6帖)の⽞関⼟間。「家に来た⼈には驚かれる(笑)。平⾯図を⾒たときに⼤きすぎかな…とも悩んだけれど、 僕たちには必要なサイズでした!将来、娘がスポーツをすることがあったらこの空間がより活躍してくれると思います。(N さん)」
作り付けの家具や壁・天井下地を解体して出てきたコンクリート躯体。「凹凸があったり、⽊の破⽚が埋まっていたり、綺麗すぎない豊かな表情が出てきてくれてラッキーでした!(N さん)」
⽞関にはル・コルビジェが⾃邸のためにデザインしたウォールライトを。「光で照らされたコンクリート躯体の表情も素敵なんです(N さん)」ガスや給⽔・給湯は露出配管でケーブルラックにまとめた。
入居者の声
物件を購⼊したきっかけは、⼦どもが⽣まれて暮らしが変わり、将来を考えたことがひとつ。なによりも、「住みたい!」と思える物件に出会えたことは⼤きかったです。全てはタイミングでした。リノベーションによる住まいづくりの過程は、 まるで journey のようでした。 やりたいことは沢⼭あるけれど、全て盛り込めばいいという訳ではない。 ⾃分達の好みは変わらないけど、組み⽴てていくなかで取捨選択はあって、進んでは戻ることもあった。⾒た⽬や費⽤含めた全体のバランスが⼤事で、 設計者による具体的な提案を頼りにしていました! 初回のヒアリング打合せは、特に⼤事な時間だったと思う。どんな暮らしをしたいのか、1〜2つメインになるような譲れないポイントやテーマについて家族で話し合い、設計者に伝えること。写真をたくさん集めるのもよいと思います。考えること、決めることが思った以上に沢⼭あって⋯スイッチプレートや露出配管の⾊分けを提案されたときは、そこまで決めるんだ!と驚きも(笑)。けれど、実際に暮らし始めてその細やかさの重要性がよく分かります。(Nさん)
OUTLINE
物件名/N邸
所在地/大阪市中央区
構 造/RC造
築年月/1992年
竣工月/2024年8月
施工面積/102㎡
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*A&Cで物件探し
*工事費:非公開
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写真:衣笠名津美
担当者より
お二人が描いていたのは「整った暮らしの中に自然素材のぬくもりと、家族団欒のにぎわい、そして時には静かな安らぎを感じられる、ほどよい非日常感のある空間」でした。そのイメージを汲み取りながら、ひとつひとつの素材やパーツを一緒に選び、納まりの打合せを重ねて形にしていきました。ワンフロア1住戸という贅沢な間取りと、7mを超える大開口の掃き出し窓を活かしたLDKは、スポーツ観戦やホームパーティを楽しめるように、キッチンと造作収納を中心としたプランに。家族それぞれの居場所を大切にしながらも、自然と集まれる温かい空間を目指しました。印象に残っているのは、ビールストーンの天板の石決めです。現場で「緑の石を足してみたい」というアイデアが生まれ、サンプルを作りながら製作を進めたことがとても楽しい思い出です。お二人の「好き」や「こう暮らしたい」という思いを大切にしながら、“自然素材の心地よさ”と“遊び心のある非日常感”が同居する心地よい住まいとなりました。(椋本)
STAFF
アーキテクト|椋本智恵
コンサルタント|岡本典子
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